最高のサービスを誇るディズニーが学ぶ日本のおもてなしの心について | Rucca*Lusikka

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先週、アースカラービジネススクール(※1)さんにて開催された、『ディズニーと三越で学んできた 日本人にしかできない「気づかい」の習慣』の著者である上田比呂志さんの講演を聴きに行きました。

講演名は、 「共生組織のサービスマインド 感動を呼ぶ”気づかい”の習慣、顧客満足追求の日本型サービスマインド」

とても楽しく、また、いろいろ受け取るものが多いお話しでした。今日はその講演と上田さんの著書のメインテーマでもある「日本のおもてなし」について、受け取ったものを書こうと思います。

上田さんは、新宿荒木町の老舗の料亭に生まれ、子供の頃から、女将である祖母と母より「おもてなしの心」を教わってきたそうです。そして大手百貨店の三越に入社され、そこからアメリカ・フロリダのディズニーへ出向されるという、最高のサービス、最高の「おもてなし」を身を持って学ばれて身につけられた方です。
そしてこの、日本人が生まれながらに備わっている価値観、

「相手に喜んでもらうために心を尽くす」「おもてなしの心」

こそが、今、グローバル化の波に晒され大きな時代の変革期を迎えてる日本にとって、世界に誇れる「強み」となる、と、語られていました。

今日はこの講演のお話と著書の感想を合わせてブログアップしたいと思います。

気づかいとは?

老舗料亭の女将だった明治生まれの祖母が「おもてなしの心」を従業員に躾ける姿を見て育った上田さん。でも子供心にそれがよくわからない。ある日祖母に「おもてなしの心ってなに?」と聞いたことがあるそうです。

「ひろ坊、お前の好きな人って誰?」

「おばあちゃん」

「ひろ坊、おばあちゃんが来たら何してくれる?」

「おばあちゃんおはぎが好きだから、おはぎつくってあげる」

「他には何してくれるの?」

「きれい好きだから、お掃除してあげる」

「ひろ坊、それが”おもてなし”って言うんだよ」

ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない「気づかい」の習慣より引用

おもてなしとは「大切な人をお迎えするときの気持ち」であり、気づかいとは「心をもって正しきことを行うこと」・・・心を込めて相手が望むことをすること、相手への細やかな配慮や繊細な所作こそ日本人にしかできない気づかい、なのだそうです。

そして、そこで働く芸者さんたちの勉強する姿勢なども目の当たりにし、

「人を喜ばせるためには自分を高めなくてはいけない」

ということを学ばれたそうです。

三越で学ばれたこと

いつかディズニーランドで働きたいという夢を持っていた上田さんは、就職活動中、三越がディズニーと業務提携したというニュースを聞き、三越を希望し見事入社されました。

三越で学ばれたことのお話は、おもにマネジメント、コーチングについてでした。つまり「マネジメント」における気づかいとは、ということです。

  • 部下の才能を見抜き(褒める・叱る、は、人によって違う。正確なアプローチが必要)
  • 仕事を任せる(思い切り任せること=責任をとれる度量)
  • 本気にさせる。

そして正解を与えるのではなく、自分の頭で考えさせること(教えすぎない)。

マネジメントとは部下に合わせること

初めて部下を持った時、部下が伸び悩んでいる時、職場に活気がない時、どうやって部下にやる気をもってもらえるのかに悩んだ時、これもやはり上司が部下を「気づかう心」が人を変えていくということ。

また接客については、声をかけることだけが接客ではない、放っておくという気づかいもある(無関心とは違う)。気づかいで大切なのは「ちょうどいい具合」。気づかってることを気づかせない、これはとても日本的な気づかいの到達点であると。

このあたりのコーチングのお話は著書の方により詳しく書かれていますのでぜひお読みになってください。

ディズニーで学ばれたこと

ディズニーランドに一度でも行ったことがある人は、その楽しさ、ワクワク感、笑顔と気持ちのいいサービスについて感動した人が多いと思います。もちろん私もそうです。最近では東日本大震災の時のキャスト(従業員)の素晴らしい対応のことが話題になりましたね。

ディズニーには「行動基準」はあっても、接客マニュアル的なものはほとんどないそうです。ではどうして個々のキャストがさまざまな場面において感動を生むような接客ができるのか。それはディズニーが最先端の技術や心理学を駆使してひとが楽しめる演出を常に仕掛け、人のHappinessをつくるという理念に対してとことん徹底している、からだそうです。

そして、そこで働くキャストたちのモチベーションを最大限に上げられるような仕掛けや仕組みもたくさんつくっている。

この仕掛や、いくつものキャストとゲストの間の感動エピソードについては、これもぜひ著書を読んでください。すばらしいです。「どんなかたも笑顔にさせようとするのがディズニーのおもてなし」なのだそうです。

私は長年アパレルで販売の仕事をしていたため、店長時代に会社から「ディズニー7つの法則―奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念」という本を、店長会での課題読書にされたので読んだことがあります。その時そこで初めてディズニーのサービスのすごさ、ストーリーのすばらしさを知りました。

が、、しかしこれ、自分の店でどこまで実践できるか?自分やスタッフの意識をこのクラスにまであげることって、この会社のシステムのなかで可能なの?…とも思ってしまいました。それはディズニーだから可能なのであって、日本のアパレル販売、デパートの中では難しいんじゃない?なんて思っていました。もちろん読んで感動し、接客モチベーションは上がったのですが。

でもこの講義で上田さんは、その世界最高峰のサービスを誇るディズニーでも絶対にかなわないのが日本の「おもてなしの心」なのだとおっしゃる。ディズニーが日本の老舗百貨店である三越と提携したのも、日本流のサービス=おもてなしを学ぶためであるのだと。

上田さんはフロリダのディズニーで、ジャパンパビリオンのディレクターとして日本食レストランのマネジメントも担当されていたそうです。日本食レストランでも裏方で働く人は国籍もいろいろ。働くことへの価値観もそれぞれ。みんながおもてなしの心をもって働くためにはどうしたらいいか、やはりその最大のモチベーションは、人からの「ありがとう」なのだそうです。

ゲスト(お客様)からの直接のありがとうが届かない裏方の人には、ゲストからの「ありがとう」をその人達にきちんと伝えることが大事。人は「ありがとう」に触れることで、働くことを喜びに変換できる。これには国籍も人種も関係ない。

そして「こういう所で働ける自分は幸せだ」と思えること。サービスがマニュアルを超えた時、それが本当のホスピタリティであると。

そんな素晴らしいディズニーが、なにを日本から学ぶのか?

例えば、アメリカでは「飴がほしい!」と自己主張をきちんとする子どもが評価され、飴をもらうことができる。しかし日本的な気づかいの下では、飴がほしいといえない子どもの思いを察知して飴をあげることができる。

上田氏:私がディズニーで最後に学んだのは、米国人はおもてなしやサービスをお金で払うということ。あれだけ徹底しているディズニー、あの魔法の国でですらチップをもらっていた。これがアメリカの文化。ディズニーでも文化は超えられなかった。日本ではwantの前に相手を慮れる。#ebs21

上田氏: これがディズニーをも超える日本の文化。資源をもたない私たちの国は、技術力とおもてなしで本当の意味でグローバル化を乗り越えられるとおもう。おもてなし立国として新しい価値観を世界中に発信できる。#ebs21

ディズニーと三越で学んだ「気づかい」と「おもてなし」(EBS第6回)より引用

東日本大震災の時の私たち日本人の行動が世界中から賞賛されました。例えば、駅で帰宅難民になってる多くの人たちが、階段の真ん中を開けて座ってる写真などが。

「え?それでなんで?」と、賞賛されたことにとまどう日本人も多かったと思います。

もちろんそんな「日本的なもの」はいい面ばかりではなく、原発避難地域から来た児童へのいじめ問題のニュースを聞くと悲しくなることだってたくさんあります。

でもやはり、日本人は世界に賞賛された気づかいの心について、もっと自信を持っていいのだと思います。(※2017年現在、逆に過剰な日本礼賛も目立ってきていますが・・・)

「おもてなし立国」としての日本。この誇りを卑下せずもっと強く持つこと。

ただ1点、勘違いをしてはならないこと。

気づかいとは決して、誰からも好かれるためにいい顔をする、ということではありません。著書には章ごとにそれぞれのテーマに合わせた名言が紹介されているのですが、

友だちに好かれようなどと思わず、友だちから孤立してもいいと腹をきめて、自分をつらぬいていけば、

ほんとうの意味でみんなに喜ばれる人間になれる

岡本太郎『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫)』

ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない「気づかい」の習慣より引用

 

いい顔をしようと無理をしてはいけない。見返りを求めてはいけない。それは本当の気づかいではない・・・ここを間違ってはいけない。

私の尊敬するある人が以前おっしゃった言葉で、「真にナショナルなものこそ真にグローバルになる」という言葉がありました。続いて、たとえば、子どもをグローバルな人間に育てたいと願い外国人風の名前をつける事、は、根本的なところが間違ってる。子どもを国際人にしたいのなら誰が呼んでも日本人と分かる名前をつけることだ、という文脈があったと思います。(すみません、うろ覚えですので大意です。)

日本のおもてなしの心はグローバリズムにじゅうぶん対抗していける。世界に輸出できる。

そしてこの「おもてなし」や「相手を気づかう」心をもっと日本人自身が自覚し、会社のなかで、暮らしのなかで、もっと『教えられて』取り入れていくことは、年間3万人を超える自殺者やうつ病の増加などを防げるのではないか?

一緒に働く人を気づかう心、ありがとうの言葉が届かない場所で働く人にもそれを伝える心。

上田さんの講演はこうして終了しました。

語り口は常に優しく、受講生一人ひとりの目をきちんと見ながら話されていて、ディズニーの『物語』の話では私も感動して涙が出そうでした。こういう語り方ができるのも、「俺の話を聞け」ではない、上田さんの「おもてなし」の心から来るのでしょうね。

 

私自身は接客業が長かった割には、本当は決して気が利くタイプの人間ではなく、筆まめでもなく、愛想が良い人間でもないです。でも仕事としてプロだったときは、お客様の顔と名前を覚え、買ったものをすべて記憶し、サンキューレターを欠かさずに出し、姿が見えなくなるまでお見送りをしていました。

母親がたまに店に来て、私が接客してるのを見ると「愛想が良くて気持ち悪いわ」と言われたくらいある意味「別人」でした(汗

なぜ私は自分の性格とは違うキャラを続けていけたんだろう?と考えると、やはり「ありがとう」が一番のモチベーションだったんだと思います。

でもこれはサービス業だからというわけではなく、どんな仕事にもいえると思いました。いまならやはり私にデザインを任せてくれたクライアントさんのために、ありがとうといってもらえるようなものを作っていきたい。

作りたいものはあっても、どんなものが「いいもの」なのか混乱しているなら、一緒に考えてひとつひとつ紐解いて、大事なものとそうではないものを整理してあげられるようになりたい。

デザインの仕事をしはじめて、しばらく「カッコイイもの」「見栄えがいいもの」をつくるのが仕事のように感じてきたけど、フリーになって思うのは、与えられた材料をただレイアウトすることではなく、ゴールを一緒に考えて同じイメージを持つことが一番大切なんだと思うようになりました。

そのためにも、もっともっと勉強をし続けなくてはと思います。そのためのモチベーションを、上田先生の講義と著書から深く学ばせて頂きました。ありがとうございました。

※1. 上田さんの講演が行われたアースカラービジネススクールは、株式会社アースカラーさんが主催されていました。現在は「地球のしごと大學」を開講して、人と自然が仲良く共生することを目指す「しごと」のための学びや体験の場を創られています。

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