自分で選び自分で決める〜浅田真央が教えてくれた「好きこそ、無敵」 | Rucca*Lusikka

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今年の桜、一番最初に開花を見たのは3月24日だったけど、4月も半ばになった今日、横浜では散り始めながらもまだ咲いている・・・今年の桜は長持ちですね。

さて今週、フィギュアスケートファンにとってとても大きなニュースがありました。浅田真央選手の引退です。

ソチオリンピックが終わって1年の休養のあと彼女が現役に戻ってきてからは、ボーナスステージのような思いで試合を見ていたので覚悟はあった。それでもまだあと1年試合に出てくれると思っていた。

なぜなら最後の全日本で彼女が跳んだ、長年エッジエラーを取られていたトリプルルッツにエラーがつかず、しかも加点までもぎ取っていたから。

浅田選手はバンクーバー五輪が終わってから、佐藤信夫コーチの元でスケーティング技術を磨き上げると同時にジャンプの飛び方をイチから改善するという取り組みをしてきた。その努力がここでやっと実を結んだのだ。

トリプルアクセルばかり言われがちだけど、何年も何年もかけてルッツを完璧に仕上げてきたことのすごさにもっと注目してほしいと歯がゆく思った。

今季はジャンプが決まらないことが多く、後輩の躍進もあり心無い報道ではオワコン呼ばわりさえあったけれど、浅田選手は全日本に向けて何ひとつ諦めずに全力を尽くしてきたことをあらためて感じた。

怪我さえなければまだできる!と思う気持ちや、もうワンシーズン、もうひとつ、試合での浅田真央の新しいプログラムを見たいという願いもあるのだけど、引退を表明したブログの記事や会見を見て、その文章も、会見での表情も、何ひとつ迷いがない爽やかな笑顔だったことで、現役復帰したこともよかったし、来季を待たずに引退することでよかったのだと思うことができた。

Twitterでファンの方が「これで私たちも成仏できる」と仰ってるのを見ましたが(笑)、私も全く同じ思いです。

会見での、涙は見せまいと後ろを向いた時の立ち姿の美しさと、振り返った時の笑顔、あの菩薩顔でキラキラと微笑まれてしまったら…もう成仏するしかないじゃないか(笑)

浅田真央の輝かしい戦歴と、戦ってきた「理不尽」

浅田真央選手は数々の輝かしい戦績をもっている。例えば全日本優勝は6回、四大陸選手権優勝3回、グランプリシリース全大会制覇、グランプリファイナル優勝は4回、世界選手権優勝は3回、これは破格の実績だ。

咲き始めからもう二週間。頑張った今年の桜。

まずシーズン通して予定される全試合に出られるだけのスタミナと、怪我をしない強靭な体がないとできない。今季は宇野昌磨選手がすごい試合数(国別入れたら10試合!?)をこなしていたけれど、伸び盛り中は試合に出る度に驚異的に成長するという「勢い」がある。彼はその波に飛び乗り見事に乗りこなした。しかし怪我のリスクも高いのでヒヤヒヤする。ベテラン向きの戦い方ではない。

10月のジャパンオープンから始まり、GPシリーズ2試合、グランプリファイナル、全日本、四大陸、世界選手権という5〜7試合をほぼ毎シーズン浅田選手はソチまで出続けていた。

ここまで多くの試合に出て、多くの結果を残したのにオリンピックでは金メダルが取れなかったことを残念に思う反面、ソチではメダリストたちよりも印象に残る演技をして、メダルの価値よりも大きなもの、美しいものをしっかりと残してくれたのはもう周知の通り。

なので今さらそれを補足するつもりもないのだけれど、

浅田選手は栄光に包まれながら、常に「理不尽」とも闘ってきた。

極端な陰謀論にはうんざりだけど、それでも他の選手と比べると重箱の隅をつつくように取られる回転不足(特にトリプルアクセルとセカンドループに)、ルッツのエッジエラー、素晴らしいスケーティング技術をふんだんに見せつけるステップを踏みながらも伸びないPCS。

昨日BSでバンクーバーオリンピックのショートプログラムの再放送をやっていて見てたのだけれど、今見るとどうみたって浅田真央がぶっちぎりでトップでしょうこれ、と思わずにいられない。

採点基準が今と違うとはいえ、女子で唯一無二のトリプルアクセルをコンビネーションで入れ、他のジャンプも全て着氷、タラソワ仕込みの鬼ステップ、素晴らしいスピン・スパイラル。しかし結果は5点も差をつけられての2位。

バンクーバーのあとのトリノ世界選手権では、フリーの「鐘」を完璧に滑りながらもいちゃもんレベルの回転不足やら何やらで、ショートで大きく出遅れてフリーでも転倒があったキム選手が驚きのフリー1位に(優勝は浅田真央)

「採点」に文句をいうのはスポーツマンらしくないこと。何ひとつ言い訳せず文句も言わず、浅田選手はルッツを辛抱強く矯正したようにルールにあわせて技術を磨いてきた。

熱心な浅田真央ファンが時々怨霊化するのは、こういう理不尽さに彼女が何も言わない姿を誇りに思いながらも、蓄積するストレスが原因だと思う…(苦笑)

真央は跳びたいのか、勝ちたいのか…?

浅田選手の引退表明文と会見を見ていると、本当にフィギュアスケートが好きで、とことん努力して、自分のやりたいことを全部貫いて、取るに足らないモノは全部切り捨てて、純度高く情熱を燃やしてそして燃え尽きていったことがよく分かる。

元陸上選手の為末大さんがこんな記事を書いていた。

どんな選手にもつらいこともあるし、タイミングに応じてそれなりにモチベーションの源はある。それでも一番根本のところで、さしたる理由がないまま努力をしている選手が時に存在する。いや、努力と思っているのは周囲だけで、本人にとっては夢中になっているだけかもしれない。そうした選手が必ずと言っていいほどまとう空気がある。無邪気さであり天真爛漫(らんまん)さだ。

天真爛漫さや無邪気さを持ち合わせた選手は、今を生きている。過去を悔やまず未来を憂うことをしない。そうした選手を前にすると、振り返りや未来の計画や、行動の意図を聞くことが野暮に思えてしまう。どんな質問も本人にしてみれば「ただそう思っただけです」としか答えられない。過去では、野球の長嶋茂雄監督に同じような印象を持った。

浅田真央の魅力、今を生きる天真爛漫さ/為末大学 – 為末大学 – スポーツコラム : 日刊スポーツより引用

為末さんの著書「諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉」を以前に読んだことがある。

アスリートは実力の世界。どんなに頑張っても越えられない壁、勝てない相手・伸びない記録というのがある。

著書の中には、手段を諦めることと目的を諦めることの違い「せっかくここまでやったんだから」という呪縛について、諦めること=勝負から逃げることではなく、努力の方向を勝てる場に移すことなのだということが書かれている。

為末さんはオリンピックに出たいという夢があった、しかし自分がこれまで取り組んできた100M走では無理だという限界を知った。そこで「100Mより勝てる」「オリンピックに出場できる可能性が高い」ハードル競技に種目を変えた。

結果、陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者となり、シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピック出場という栄光を手に入れたのだ。

「勝てるところに場を移せ」と言ってもその競技にすべてを掛けてきた選手にはそうかんたんに決断できることではない。しかし「オリンピックに出たい」「メダルが欲しい」のであれば、それは逃げではなく新しい挑戦だ。

「諦めなければ夢は叶う」

といえるのは勝利者となった選手ひと握りだけで、多くの敗者は「諦めずに頑張ったけど夢は叶わなかった」のだ。

この本はそんな「敗者(多くの人間)」に向けて、本当に勝つための心得を教えてくれている。そうして「勝ちどころ」を掴んだ為末さんだからこそ、とても説得力があって、いくつも感銘する箇所がありました。おすすめしたい本です。

花筏を鴨がスイスイ〜

だけど、過去の浅田真央選手に関する為末さんのツイートや記事には微妙に共感できないところがあって、それはたぶん浅田選手が「それでも自分のやり方で闘う」選手だったからかもしれない。

ソチオリンピック前かその前のシーズンの試合で、浅田選手がトリプルアクセルの調子が悪く、試合前の練習でも何十回も転倒してるのにそれでも試合に入れてきて転倒したことがあった。

その時

「跳びたいのか、勝ちたいのか、どちらもというのは虫が良すぎる。もうベテランなのだからどちらかを選ばなくてはいけない時期だ」

こういう論調の記事をいくつも見てきた。

おそらく為末さんもこの当時はこちら寄りの人だったのではないかと思うのだ(※為末さんが言った言葉ではありませんし、あくまでも勝手な推測です)

しかし浅田真央は「跳んで勝ちたい」のだ。

だけど跳べない時期が長く続く。さらには跳ばなかった試合で勝ってしまう。

浅田真央が「勝つこと」を目指したらここでトリプルアクセルは封印し、磨いてきたステップやスピンで高得点をキープしていくだろう。でも彼女は「場」を動かそうとしない。

ダブルアクセルにすれば彼女はスタミナオバケでもあるので、全てのジャンプを流行りの戦略であるプログラム後半にいれて得点の掛け数を増やしたり、いちいちタノ(手を上げる)をつけての加点稼ぎもやれただろう。

でも彼女はそうしない。

けっきょく佐藤信夫コーチも折れて、浅田真央はトリプルアクセルに挑み続ける。その先にあのソチオリンピックがあったのだ。

結果、悲願の金メダルどころかメダルさえも取れなかった。しかしあのフリーでの感動はなんだろう?あの清々しいまでのやりきった表情は。

勝てなかった・・・なのに多くの選手が彼女のフリー演技を賞賛した。引退表明後は世界中のスケート選手やアスリートたちが彼女にエールを送った。なんて幸せな選手なのだろう。

天真爛漫さや無邪気さを持ち合わせた選手は、今を生きている。過去を悔やまず未来を憂うことをしない。そうした選手を前にすると、振り返りや未来の計画や、行動の意図を聞くことが野暮に思えてしまう。

為末さんのこの言葉は真央さんをよく現していると思う。

真央さんは会見で「この道を選んだのも自分ですし、自分で臨んだ道なので、つらいと思ったことはありません。」と言っていた。

きっと一番つらかった時期でさえも幸福だったのだろう。

浅田真央は自分のやりたいことは全部自分で選び、大きすぎる期待を背負いながらも最後まで自分を曲げなかった。常に「今」に集中して生きている。あの時こうしていればなどと後悔することもなければ未来を心配することもない。

こういう人はどんな状況に置かれても決して不幸にはならないのだ。

好きこそ、無敵

場を移すことは負けではない。

いつまでも場を移せず敗北感を抱えたまま挫折するよりよっぽどいい。

では、子供の頃からの夢である五輪金メダルの最後のチャンスを諦めた浅田真央があんなに晴れやかなのはなぜか?それは「やりきった」「全て出し尽くした」と共に「自分で決めてきた」があるからだ。引退さえも。

場を移すにしても、とどまるにしても、それはその人の生き方でどちらが良いとか悪いとかではない。全力を尽くしたかどうか、自分で選んだかどうかが大事なんだ。

彼女が今後どうやってスケートに関わっていくのかはわからない。ひとまずは夏にTHE ICEのショーがあるのでそれに向かってまたプログラムを作り練習していくのだろう。引退後の彼女がどういうショーを作り滑るのかと思うとワクワクする。去年はチケットが取れたので見に行けたけれど今年は難しそうだ…(汗)

フィギュアスケートファンとして、試合での勝負師な浅田真央を観ることができなくなる喪失感は拭い難い。だけど氷面を風のように走るエアリーなスケーティング、自在にエッジを操るステップ、これらを新生・浅田真央として今度はショーで楽しめればそれでいい。

彼女はこれからもずっと、自分の人生を自分で選び、「好きこそ、無敵」を貫いていくんだろうと思う。

小さい頃から本当にスケートが大好きでやってきました。いま頑張っている人は大好きな気持ちを忘れないでねと言いたいと思います。

【全文&動画】浅田真央さん引退会見「スケートは私の人生」 | ホウドウキョクより引用

フィギュアスケートの選手たちは皆難しいジャンプや技への挑戦をしながら、さらに自分の個性に深く向き合って自分だけの表現を追求していく。ナンバーワンを目指しながらオンリーワンでもあらないとならないのだ。

フィギュアはタイムや得点を自分で出すのではなく他者の評価による採点競技だ。納得がいかない採点をされることもある。

他者の評価にいちいち左右されない、確固たる軸を自分の中に持っていないと続けることが困難なスポーツだと思う。なので多くの選手は勝つことよりもまず「ノーミス」を目標にする。

フィギュアの選手が言う「ノーミス」とは単なるミスをしないことではない。自分が練習してきた技の全て、自分がずっと向かい合ってきた自分の個性の表現、これらを全部試合で出し切ることなのだ。

これは普通に生きている私たちの社会にも言えることじゃないかな。実力を出しても他者の評価で結果を決められてしまうことは多い。他人の評価を軸にしてるとたちまち自分を見失う。自分の個性に向き合い表現力を磨いていかなくてはならないのは、私たち一般人も同じことなのだ。

だからこれからも私はフィギュアスケートに惹かれるのかもしれない。

浅田真央さんありがとう。そして本当にお疲れ様でした。

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あとがき

浅田選手のプログラムで一番好きなのは?と聞かれたら悩みますが、この先ショーで見てみたいのは、シェヘラザード、リチュアルダンスの完成形(ショーバージョンで)、チェロスイートですね。復帰後の円熟の極みのプログラムがよりいっそう好きです。

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