私はド近眼なので外ではコンタクトレンズをつけていますが家ではメガネです。昔は掛けっぱなしで済んでいたのだけど、最近ローガンが入ってきたせいか掛けたり外したりする事が増えてきてしまった。
で、外したメガネをどこに置いたのかわからなくなることが頻発し、メガネ無しでメガネを探すというのは非常に困難なことなので、家にダンナがいるときは
「ねえ、私のメガネその辺にない?」とまず聞き、近くを見てもらって私は別の部屋に探しに行くわけだ。
その時かなり高確率で
メ〜ガネメガネ〜♪お〜れのメガネはどこ行った〜♪
という謎歌が頭の中をまわり口ずさんでしまうんだけど、これって私の父が生きていた頃、家の中でメガネをどっかに置き忘れて探していたときのハナウタだったりする。
そんなわけでメガネを探すことが多くなった今日このごろは父のことを思い出すことが多い。
父が亡くなって今年でもう9年。
父にとっても私にとっても、なぜこの場面で?とツッコみたくなるんだけど、そうなんだからもう仕方がない(笑)
「ふと」思い出す時の、リアリティ。
子どものころの友だちが着ていた服、会社の先輩が吸っていた煙草の銘柄、昔好きだった曲の歌詞、おいしかったデザート、旅行先で降った雨、電車の中で泣いていた見知らぬ女性、
普段は全く忘れていたことでも、何かの拍子に「ふと」思い出すことがある。
「ふと」は瞬間に消えてしまって、また日常に戻るけれど、心のなかにはその「ふと」の余韻が残っていて、家に帰ってから昔のアルバムを開いたりCDを探したりすることもある。でも「ふと」のリアリティはすでに消えてしまって、写真も音楽も結局はそのリアリティの記号でしかない。
そういう「ふと」をつかまえて、なにかのかたちに残すのが上手い人がいる。
それは詩だったり、メロディだったり、写真だったり、エッセイだったり。
益田ミリさんは、そんな日常のなかの「ふと」を切り取るのが上手い人だなぁといつも思う。
ミリさんが「ふと」切り取ったものに私は共感することがとても多くて、それらはくすっと笑えるものだったり、美味しそうでお腹が鳴るものだったり、中には時々ズキンと痛くなるものもあるのだけど、全部がそうというわけではなくほとんどは淡々と流れていく。
その淡々としたリズムが、私にちょうどよくて気持ちいい。だから好きなんだと思う。
ミリさんが切り取った「ふと」の場面は、私の中のどこかに積み重なっていたモノに「リアリティ」をつけて「ここにいるよ」と鳴らしてくれる。たぶん、ミリさんファンの人はこの感覚をわかってくれるんじゃないかな。
益田ミリさんの「今日の人生」
そんなわけで、益田ミリさんの新刊「今日の人生」を読みました。
これがね、しみじみ良かった。
だけど、どう良かったかを説明するのは難しい。ていうか説明自体がナンセンスな気がする。淡々と、そしてしみじみと良かった。「ふと」がたくさん溢れていた。
先日、同じくミリさんファンの友だちが「表参道の本屋さんで益田ミリさん展をやってるよ」という情報を教えてくれたので、丁度表参道に行く予定があった私は早速行ってきました。
場所は地下鉄の表参道駅近くのギャラリー山陽堂さん。
益田ミリ「今日の人生展」
期 間:2017年5月9日~23日 月~金:11~19時、土:11~17時(5/10・最終日の23日は17時まで)
むなしい日も、幸せな日も、おいしいものを食べた日も、永遠の別れが訪れた日も…
人生の機微を描いたコミックエッセイ『今日の人生』(益田ミリ著、ミシマ社)。原画をはじめ、
著者の益田ミリさんが毎日撮りためている「今日の食卓」の写真、
描き下ろしマンガなどを盛り込んだ
「ここだけ」の特別展示をおこないます。デザイナー・大島依提亜さんによる
カラフルな装丁や、思いのつまった本づくりの一片も公開。あたりまえのような日常を、ふと嬉しく感じるような
ささやかなしあわせが詰まっています。
ぜひ足をお運びください。
ギャラリー山陽堂 イベント開催予定・スケジュールより本文引用
「今日の人生」は、ミシマ社さんより出版されたミリさんの新刊です。
いつものコマ漫画エッセイなんですが、ところどころミリさんが撮影したご飯の写真がはさまっていたり、紙やインクに工夫があったりと装丁がなかなか凝っています。
購入する時、値段を確かめずにレジに持っていったら「1600円です」と言われて思わず財布の残高を確認してしまった(笑)
でもこの凝った装丁とミリさんの淡々としたイラストがすごくよく調和していて、なんだか「手作りで贈られた本」みたいな感じなんですよね。お値段納得です。
ミリさんはたぶん、日常が好きで、美味しいものが好きで(デパ地下出現率高いw)、でもほのぼのしつつも自然とかナチュラルとかそっち系ではなく、けっこうアウトローなところが感じられて、そこから醸しだされる「ふと」のところも好きですねぇ。
うん。
「今日の人生」ではいきなり最初から親子ケンカ(娘40代)が始まって、そのあと日常が淡々と綴られていく中、突然、最初の親子ケンカが懐かしく痛くなるように感じる箇所があるんです。
そこのシーンを読んだ時、私の中のどこかに積まれていた
お〜れのメガネはどこ行った〜♪
の、あのハナウタがリアリティを持って脳内リフレインしてしまい、鼻の奥がチクンと来て、出先で読んでいたのでちょっと困ってしまいました。
たぶん私はこれからもメガネを探す度にあのハナウタが蘇り父のことを思い出すんだろうけれど、痛みみたいのはもうなくなってる。
でもミリさんの、そして誰かの同じ「ふと」とシンクロした時に、またチクンとくるんだろうな・・・でもきっと、それはあたたかく。
そんなふうに、「ふと」の切り取りは、誰かの優しい(そしてちょっとせつない)思い出と繋げてくれる。
私もそんな「ふと」をノートに集めて、ブログに書けるようになりたいなと思うのでした。
紹介リンク
益田ミリさんのおすすめ本
あとがき
ミリさんの本を読んでいるとデパ地下に行って美味しいお惣菜を買いたくなったり、ホテルでスイーツ食べたくなったり、タクシーに乗りたくなったりするのでちょっと困ります(笑)ああそして岐阜の図書館、行ってみたいなぁ。