カーネーション・残り一週間で語ってみる。 | Rucca*Lusikka

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この半年、朝の連続ドラマ「カーネーション」にはまっております。昼の再放送を見たあといつも感想をつぶやいているので、Twitterでフォローしてくださってる方はご存知だと思いますが。

我が家には録画機器がないので、毎日の連続ドラマを半年見るというのはしんどかったです。(普段は録画するほどテレビ番組に執着がない方なので・・・結局買わずじまい)
とはいえカーネーションはそんな無理をしてでも見応えのある素晴らしいドラマでした!まだ終わってなくて来週からいよいよ最終週に入るのですが。そんな残り僅かなカーネーションを惜しんで、ブログを書いてみたくなりました。

カーネーション

カーネーションのヒロイン小原糸子のモデルは、世界的デザイナー、コシノ三姉妹の母である小篠綾子さんです。ドラマはフィクションですが、小篠さんのエッセイを元に創作されています。脚本家は渡辺あやさん。

私ははじめの子役の頃は見てなくて、尾野真千子さんの糸子が女学生で、ミシンに一目惚れしてたあたりから見始め、そこから一気にはまってしまいました。

とにかくこのヒロイン、ガラが悪い!(笑)

男の子と取っ組み合いのケンカはするは、巻き舌でまくし立てるは、舌打ちするは、清純可憐な朝ドラのヒロイン像を見事に打ち破ってくれていました。

愛すべきダメ男、糸子のお父ちゃん

でも尾野さんの少女糸子はそれでも憎らしげがなくかわいいんですよね。ただただひたすら、大好きな洋裁の道に進むために突っ走る。その一直線な糸子に最初に立ちはだかるのはお父ちゃん。

呉服屋の主として、娘が洋裁師を目指してることにまず反対します。この小林薫さんの演ずるこの善作お父ちゃんも愛すべきお父ちゃんでした。なんというか、ダメな人なんですよ。神戸の大金持ちの深窓のお嬢様と駆け落ちしたという豪放な男…のようでいて、家族には威張ってるくせに外では卑屈だったり。

でもお父ちゃん、大反対しながらも、東京から来てたミシンの先生に「娘に洋裁を教えてやってください」と土下座して頼み込んだり、お店の大事な反物全部売ってミシンを買ってくれたり。商売人としてはイマイチだったけど、娘の才能を見ぬきこれからは洋服の時代やという勘は鋭かったんですね。

やがて糸子は父の命令で行かされた修行先でメキメキと才能を発揮し、一家の稼ぎをまかなうまでに成長していきます。そこで起きるクリスマスケーキ事件!

一家の稼ぎ主は善作から糸子に確実に移ってきている。「自分に洋裁店をやらせて欲しい!」・・・糸子が父親を越えたことを糸子自らが口にしてしまった時の家族の緊張。善作に引っぱたかれた糸子とひっくり返されたケーキ。気まずくなった食卓で「まだここが食べられる、お前が一番先に食べろ」と糸子を慰めるハルおばあちゃん。でもハルおばあちゃんは不器用な息子の気持ちもよくわかってる。

前半の一番心に残るシーンでした。

小原呉服店は小原洋裁店として代替わりし、父からの贈り物である新しい看板を掲げ、家族と近所の人からの祝福を受けながら糸子はいよいよ念願の洋装店を開店します。

お父ちゃんという、超理不尽で愛すべき大きな壁に挑み続け、ついに許され夢を叶えた糸ちゃん。おめでとう!

糸ちゃんの洋裁店ははじめは苦労したものの徐々に繁盛していきます。そこへ降って湧いたような縁談。相手はかつての修行先の同僚で糸子をその時見染めてたという、入婿OKで紳士服職人の勝さん、まわりはみんな大歓迎&大賛成!糸子は仕事に夢中でそんな気全然ナシだったんだけど、気がついたらあっという間に外堀を埋められ結婚へ。

このへんは時代ですねぇ。この時代じゃなかったら、この時期で糸子は結婚してなかったように思える。まわりの「縁談世話力」あってこそ(笑)。

いつも上機嫌のダンナさん、繁盛していくお店、次々と生まれる子供たち、新しく雇った住み込みのお針子さんたち、店を譲って出て行ってたお父ちゃん一家もこの時また戻ってきて、小原家には一体何人が寝起きしてるんだ?ってくらい大家族になっていきます。

幸せな時代。でも時代はどんどん戦争へと動いていきます・・・。

戦時中もミシンを踏み続けた糸子が迎えた終戦

ああっと!半年やってたカーネーションをイチから語ってたらエライことになりますね(汗)

このあと幼馴染や夫を戦争に取られ、お父ちゃんが亡くなり、糸子は女手ひとつでお店と、家族と、子供たちと、従業員たちを守りぬくことになります。

大切なミシンをお国のためにと寄付させられそうになる危機。次々と来る大切な人たちの戦死の通知、休みなく鳴る空襲警報、一家の主として大家族の食料をまかなう心労。

真夏の暑い日々、毎日食料を母と子供たちのいる疎開先へ運び、防火訓練に追われ、夜は空襲警報で満足に睡眠も取れない。心が疲れて麻痺して、夫の戦死通知に悲しむ感情さえも失い、何も考えられなくなっていた時に、まだあどけない娘たちがくれた赤い花びら。

戦争のため今年も取りやめになった動かないだんじりの前で、糸子は幸せだった日々を思い出し、失った人たちを思い出し、初めて大声で泣くのです。倒れた自転車と散らばった花びら。大泣きに泣く糸子に、あえて声をかけず倒れた自転車を起こした履物屋のおっちゃん。。。このシーンもすごく印象的で今思い出しても泣ける。。。

糸子に生きている感情を呼び戻したこの花びらのシーンを、ずーーーーっと後でまた思い出させられる展開があります。それが先週の金曜日の放送でした。モノクロの心に鮮やかな色合いを呼び覚ました花びら・・・。

この他にも「カーネーション」のタイトルに相応しく、ドラマの中でキーになるアイテムには必ず「赤」が印象的に使われていました。

勝さんがくれたカーネーションの花束、プレゼントしてくれた真っ赤なショール、妹の静子の口紅(静子に恋人がいた事の伏線?)、娘たちの摘んだ花びら、糸子が初めて好きになった人・周防さんが作ってくれた長崎のお菓子の赤、周防さんとの別れの日に着ていた糸子のワンピースの赤、糸子の娘、優子と直子のライバル対立を象徴した直子の赤いバッグ、ずっと糸子を見守ってきた北村が、一緒に東京に行こうと誘った日に持ってきた真っ赤なカーネーションの花束。

そしていま、88歳の糸子がプロデュースした病院でのファッションショーで、最後のモデル、末期がん患者の加奈子が会場にまいた赤と白の花びら・・・。

さて、実在のモデルの小篠綾子さんが、70代でブランドを立ち上げ90すぎても死ぬまで現役でいた方なので、その晩年をしっかりと描かないわけにはいきません。ヒロインが尾野真千子さんから夏木マリさんにバトンタッチしました。

尾野さん糸子の最後の回で、糸子は北村の、一緒に東京に行こうというある意味プロポーズ?を(プロポーズと受け止めたかは微妙でしたが)断るのです。自分はここ岸和田で生きていくと。

北村は糸子に言います。

「お互い、この先なくしてばっかしや。おまえの宝かて、どうせ一個ずつ消えていく。人かてみんな死んでいくんじゃ。ここにおっちゃら、ひとりでそれに耐えていかなあかんねんで。しんどいぞ、そんなもん。」と。

糸子は言います。

「うちはなくさへん。相手が死んだだけで、なーんもなくさへん。うちは宝を抱えて生きていくよって。」

そこから12年後の糸子は相変わらず仕事も忙しく現役です。でもあの優しいお母ちゃんも、あたたかいご近所さんたちや頼もしい従業員さんもみんないない。娘たちは有名なデザイナーとしてとっくに旅立っています。

ただでさえヒロイン交代ってだけでも視聴者的には寂しい物があるのに、さらに脇役さんまで皆殺しとは(笑)

そんなわけで夏木さんの糸子はドラマの中での過去から引き継いだものが何もない状態でした。

尾野真千子であることさえ失った?糸子の老年を描く

なんでここまで夏木マリさんの糸子をこんなにも「ひとり」にしていったのか?

・・・「ひとり」になったのは見ていた私たちもでした。ヒロインだけでなく馴染みある脇役さんも違う。商店街も店も新しくなってて、出てくるのは見慣れぬ若いアホボンズとヤンキー孫という「置いてきぼり感」。

そして続くブランド立ち上げ話と孫の更生・・・私、夏木さんの糸子にそれほど違和感はない方だったんだけど、それでも話の展開に置いてきぼり感はぬぐえなかったのです。

でも、またその後の病院のファッションショー話で謎が解けました。

普通の年寄りに比べ全然元気だし、成功してるし裕福だし現役として輝いてる糸子、それでも一生をずっと共にした大切な人たちはみな鬼籍に入り、先生先生と持ちあげる人はたくさんいても、糸ちゃんと呼ぶ人はもうひとりもいない。

もしかして夏木糸子になってからの最初の「置いてけぼり違和感」は、糸子の「老い」と「ひとり」をリアルに視聴者に感じさせる演出だったのではないかと??

年をとるって、そこまで失うんですよって。まさにヒロイン交代ってくらいに。・・・きっと。

そしてここまでギリギリ置いてきぼりにさせられたあと、終盤に向かってどんどん夏木糸子が、尾野糸子からの「積み上げてきた宝」をこれでもかと見せてきました。自分が一生かけて信じてきた「洋服の力」を。「人は着るもんで変わるんや」を。(奈津との再会も過去とをつなぐ絶妙のタイミングで)

病院のファッションショーでは末期がんの患者さんが、糸子から自分が果たすべき役割、「奇跡を見せること」を託されました。

彼女はそれをしっかり受け取り「私はこれからも絶対に幸せです」と宣言し、きれいに着飾り満面の笑顔で会場に花びらを撒くのです。きれいなお母さんの輝く笑顔を見て幸せそうな彼女のまだ小さい子供たち。

かつて糸子が生きている感情を取り戻した、子供たちからの「赤い花びら」がここにでてきたのですよ。でも今回の花びらには半分白い花びらも混ざっていました。そして子供たちに向かってまかれている・・・もしかしたら、白い花びらの方は「死」を象徴しているのかもしれない。

このドラマ・カーネーションのすばらしい演出の妙。ずっと「赤」で「生」を象徴してきたけど、最終週は「白」がでてくるのかな・・・なんて考えたりもします。それともやはり糸子の一生は「赤」のまま終わるのかな?

ここまでがもうずいぶん長い話なので、とてもうまくまとめられたとは言えませんが…とにかく素晴らしい演出と素晴らしい脚本のドラマです。もちろん役者のかたみんなも。

残りラスト一週、最晩年にはいった糸子が今度はどんな奇跡を見せてくれるんだろう?

半年見続けた私としては、もう全てが見逃せないです。そしてもうしばらく連続ドラマはいいです(笑)多分すごくぽっかり穴が開きそうな気がしますが・・・自由にもなれます(笑)

そんなわけで、終わったらまた語ると思いますが、終わる前に一度語っておきたかったカーネーション話でした。

 

 

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