「どうせ沼」に気づく~真央ちゃんに嫉妬する彼女からの学び | Rucca*Lusikka

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「真央ちゃんに嫉妬してる」

Twitterから流れてきたこのタイトルの記事を読んで、なんだかすごく目からうろこというか、最近ちょっと悶々と感じていたことに、スパーっと新しい切り口ができて日が差してきたというか、なんだかそんな気分になったのでご紹介します。

流れてきたのは、雨宮まみさんというライターさんの人生相談的?な連載記事です。

雨宮まみの“穴の底でお待ちしています

 

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回 | cocoloni PROLOより写真と序文引用

そこにはこんな「感情の吹き溜まり」が投稿されていました。

「真央ちゃんに嫉妬してる」

 私は、異常に嫉妬深い人間です。 彼氏はいないんで、恋愛関係の嫉妬はしたことがないんですが、日常的にあらゆることに嫉妬しまくっています。

(略)

自分が嫌になるんですけど、私は浅田真央ちゃんにまで嫉妬します。オリンピック選手と自分を比べて嫉妬するなんて、普通の感覚では理解できないと思うので、人には言えません。みんなみたいに純粋に真央ちゃんを応援できません。私は真央ちゃんと同じ23歳です。 どうしても、「真央ちゃんって頑張り屋で偉いよね。私も見習わなきゃ」と言おうとすると、泣き出しそうな気分になります。

私は真央ちゃんがとても恵まれてる人間に見えるからです。私は何もない。誰も私を見ていないし、応援していないし、必要とされてもいない。それでも私は私なりに毎日、死にたい心を抑えて生きている。私は私なりに頑張って生きているのに、人に認めてもらえないどころか、真央ちゃんのような「理想の娘」みたいな子を見習わなくてはいけないような空気が世間には流れている。同い年の女の子を、尊敬「させられている」という違和感があります。そんなことが辛くて仕方ないのです。

(略)

私だって真央ちゃんみたいになりたかったです。でもなれなかった。醜く歪んでいて、太っていて、可愛げがない。私は他人が妬ましくて仕方ないです。 長々と支離滅裂な文章を失礼しました。 いつかはこの平穏な地獄から抜け出して、もっと心満たされた生活ができるようになりたいものです。

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回 | cocoloni PROLOより引用

昔、販売員やってた時に、ある種のお客さんをとても苦手に思っていました。

ごく少数のお客さんなんですけど、なんともいえない「オーラ」があるのです。接客したら絶対なにか吸い取られる…というか、毒気に当てられる…というか。

果たしてどんなオーラかというと、

「どうせ無理オーラ」

です。

どうせ…若くないから無理、太ってしまったから無理、お金がないから無理、子供がいるから無理、夫がうるさいから無理。持病があるから無理。

全ての会話にこのマイナスのオーラがねっとりと含まれていて、それと一緒に「販売員ごときにはどうせわからないでしょうね」的な共感を拒否するプライドの高さがある。非常に難しい。

この方々は「呼ぶまで話しかけないで」という感じではなく、むしろお店に会話をしに来るという方が多かったのですが、会話の中で少しでもその地雷を踏んでしまったものならば、たちまち攻撃的になってしまうのです。

その攻撃性の元は「嫉妬」だと思うのです。「どうせ」が深いほど嫉妬も深い。攻撃の対象は人によって、若くてきれいなスタッフだったり、あこがれのショップでの仕事を持ってる主婦スタッフだったり、様々でした。

私は今でも電車の中などで、このオーラを持つ人に気づくことがあります。この独特のねっとり感にはできるだけ今でも近寄りたくなく、危険センサーが働くのかもしれません。

さて、先ほどの「真央ちゃんに嫉妬する」

これを読んだ時、このオーラの人を思い出しました。おそらく彼女にも同じオーラが漂っているのではないかなと。ああめんどくさいタイプの人だ、近づきたくないと。

でもですね、雨宮まみさんからのこの嫉妬深い彼女への解答がですね、素晴らしかったのです。

黒い感情のるつぼは「油田」である

この投稿を読んで、私は最初に「負けた……」と思いました。だって、「真央ちゃんに嫉妬」ですよ!?

少々自分の話をさせていただきますが、私がライターとしてデビューしたのは、ある雑誌のライター募集に応募したのがきっかけでした。その応募のために書いた文章は、やはり同世代(正確には年齢は違います)の、「椎名林檎に嫉妬している」という文章でした

(中略)

椎名林檎さんと真央ちゃんのどっちが偉いという話ではないのですが、やっぱり「真央ちゃんに嫉妬」って、「椎名林檎に嫉妬」の何百倍もインパクトがあるんですよね。椎名林檎には、当時鬱屈を抱えたサブカル女子がみんな嫉妬していたと思いますが、真央ちゃんに嫉妬は……。この「みんなが真央ちゃんを応援してる」空気の中、周りの空気に流されない精神の強さを感じるんですよね。

くりりんさんは、ご自分の嫉妬の気持ちをすごく的確に分析されています。普通の人は、嫉妬をここまで丁寧に解きほぐすことができません。できないというより、しようとしないんです。

真央ちゃんに嫉妬の気持ちを抱いたとしても、それが嫉妬だということすら気づかずに「真央ちゃんって、なんか嫌い」。普通はこれで終わりです。なぜ嫌いだと感じるのか、嫌いだと感じる気持ちの奥に何があるのか、掘り起こそうとする人は少ないです。

これができるのは、一握りの人間だけです。「なんか嫌い」で済ませない人もいますが、そういう人たちはどうするかというと、イラッと来る気持ちを解消するために「尊敬」に逃げます。「やっぱりすごい。(自分の感情はさておき)尊敬できる」という方向に逃げるのです。

醜い嫉妬を尊敬にすり替える。感情ロンダリングです。これをやれば、自分が嫉妬なんかしないキレイな人間だと思い込むことができますが、こういうごまかし方ができない人は、嫉妬をどう消化すればいいのか悩むことになるのです。くりりんさんのように。

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回 | cocoloni PROLOより引用

まず、雨宮さんはこの「真央ちゃんに嫉妬する」ということを表明する彼女の正直さを讃えているのです。

浅田真央ラストダンス

このトリプルアクセルの軌道を確認する目に惹かれて購入したNumber

世界中を感動させた国民的ヒロインへの大それた「嫉妬心」を、「やっぱりすごい。(自分の感情はさておき)尊敬できる」と、きれいな言葉でごまかさずに、「嫉妬」だと認めている正直さを。

自分が昔「椎名林檎に嫉妬した」ことを出して、それのさらに上を行くスケールの大きい嫉妬だと(←褒めています)

くりりんさんのこの自己分析能力と嫉妬心の強さは、巨大な才能にしか見えないんです。本気で言ってます、これは油田です。嫉妬心の強さは、そのまま、感情のエネルギーの強さです。これは、使い方によっては人の心までも動かす力のあるものです。そして自己分析能力があるということは、おそらく、間違った使い方や卑怯な使い方はしない、ということなんです。

そういうずるいことをしようとすると、くりりんさんは自分のずるさに必ず気づくと思います。これを持っている限り、くりりんさんは人生で道を踏み外すことはまずないでしょう。

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回 | cocoloni PROLOより引用

そして、この投稿者・くりりんさんの嫉妬心と自己分析力は「才能」であり、その感情のるつぼは、何かを表現する仕事をしている人であれば、喉から手が出るほど欲しい「個性」という「油田」であり、さらにその「正直さ」を持つ限り、あなたが道を踏み外すことはまずないと。

この解答、浅田真央選手と同じ23歳というまだまだ若い彼女に、生きづらい日々を送っているであろう彼女の心に、どれだけ救いをもたらしただろう??

多分、自分の持ってる感情の中で一番、嫉妬心は自己コントロールが出来ないものだと思います。

投稿者の彼女がこの解答を読んでも、だから他人への嫉妬心が鎮まるということはないと思う。だけどもしかしたら創作という道を見つけてそこに進めば、誰かに認められるものを作れるだけのエネルギーを自分は持っている、ということに気がつくかもしれない。

私はこれを読んで、まだこれからどうにでもなれる23歳という、彼女の若さを羨ましく思いました。そういう嫉妬を油田に変換できるエネルギーを自分は持っているだろうか?

そもそも、嫉妬するなんて感情は生きにくいだけだからと、雨宮さんのいう「感情ロンダリング」が上手になって、エネルギーそのものを失っているのだと思うのです。

「どうせ沼」に落ちてることに気がつけるか?

さきほどの「どうせオーラ」を持つ人。

まわりに毒を撒きながら生きているようなその人がどうしてそうなってしまったのか。

実は先日、久しぶりに会った職業訓練校の先生に言われたのだけど、初めて会った時私からはものすごいマイナスオーラがでていたらしいです(苦笑)

なるほど、振り返るとあの時は一番、これからの仕事に悩んでいた時期でした。

どうせもう歳だし

どうせもう今から勉強したって

私もそんな「どうせ沼」に落ちていて「どうせオーラ」を醸していたのでしょうね。本人的にはやる気いっぱいモードだったつもりなんですが…。職業訓練校に通ってスキルを付けるぞ!というやる気モードの一枚下に、気負いと不安がとぐろを巻いていたんだと思います。

感情ロンダリングが身につきすぎてしまって、自分が「どうせ沼」に落ちていることにも気が付かないというのが一番ヤバイことですね。四十路になるといろんな意味で苦しい思いすら手抜きをするようになります。

投稿者くりりんさんの嫉妬深さと正直さ、それを見事に拾って油田に変える道を示した雨宮さんの解答。

雨宮さんの解答を、「あなたとは時代が違う」「上から目線で何を言う」と聞く耳持たないほどこの彼女はスれてないだろうというのは、「いつかはこの平穏な地獄から抜け出して、もっと心満たされた生活ができるようになりたい」という彼女の投稿の最後の切実な一文からよくわかります。

それを汲み取ってのこの解答はなんて優しいのだろうと。沼を沼と認めてそこを油田に変えたという経験の自覚がある人じゃないとこうは答えられないでしょう。

私が今まで、この沼オーラを出している人に対して「触らぬ神に祟りなし」と避けまくっていたのは、自分の沼に対する自覚がなかったからかもしれません。沼に近寄らないことが沼に落ちないことだと思ってた。

浅田真央ラストスマイル

この涙は、やはり何回見ても私も泣けてしまう。

そんなわけでこの「真央ちゃんに嫉妬してる」の記事、とっても心に響きました。今読めて本当に良かったです。

今、他人の出す「沼オーラ」に敏感になってる自分は、実は沼にいるのではないか?正直に向き合ってノートで考えてみます。

参考リンク紹介

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回 | cocoloni PROLO

 

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