「今ない仕事をつくる」21世紀の新しいスキルを生み出す場~ファブラボ鎌倉を訪ねて | Rucca*Lusikka

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横浜のwebデザイナー&ライターRucca(ルッカ)のサイトです。ノート術で人生を楽しくおもしろくすることをテーマにブログを書いてます。

マグカル(http://magcul.net/)というサイトがあります。

神奈川県内で開催されるアート&ミュージック&カルチャーイベントを紹介するサイトで、たとえば今度の週末なにかやってないかな~と思ったとき、日にちと行きたいエリア(横浜、横浜ベイエリア、川崎、横須賀三浦、県央、湘南、県西、など)を入力し検索すれば、その日にそのエリアで行われてるコンサート、演劇、美術展などの一覧が見られます。

マグカル

神奈川県のカルチャーを発信するメディア「マグカル」

私は横浜在住なので、週末どんなイベントをやってるのかをチェックするのにとても便利。そのほか特集記事の読みもの、特に音楽、演劇関連の取材記事にボリュームあってマニアックな内容も多く読み応えアリです。

先月末、そのマグカルサイトの運営を手がけていらっしゃる横浜のweb制作会社、インフォ・ラウンジさんより取材の仕事をいただき、鎌倉の「ファブラボ鎌倉」という工房代表の渡辺ゆうかさんにお話を伺いました。

今回はその取材で伺った、ファブラボのものづくりと地域とのかかわりについての話から、私なりに感じたことを取材記事とは別に感想をまとめたいと思います。

インタビュー記事とブログ記事、媒体の違いも含め両方合わせてお楽しみいただければ嬉しいです。

 

ファブラボ鎌倉とは

ファブラボ鎌倉

ファブラボ鎌倉は築128年の酒蔵の中にあります。

インタビュー記事はこちらです。

「ファブラボ(FabLab)」ってことば、聞いたことがありますか?
なにをしている場所かご存じですか?
ファブラボの「ファブ(Fab)」とは、「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(素晴らしい)」という2つの意味が込められた造語で、ファブラボとは個人による自由な「ものづくりの可能性」を、それぞれの地域のさまざまな人たちと連携し、インターネットで全世界に情報発信し広げて行くムーブメントの拠点・「ラボ(Lab)=工房」のことです。
鎌倉市にある「ファブラボ鎌倉」代表の渡辺ゆうかさんに、ファブラボから生まれる、人と、世代と、地域と、世界がつながる「ものづくり」についてお話を伺いました。

ファブラボ鎌倉~モノづくりから地域の絆と創造的な暮らしをつくる | マグカル より引用

ファブラボという言葉は前から知っていたけど、私にとってそれは3Dプリンタやレーザーカッターなど最先端機械を備えた工房、という認識で、Kinkos(印刷やコピーサービスを行うチェーン店)のものづくり版、または東急ハンズやホームセンターにあるDIY工房みたいなイメージでした。

しかし実際はそうではなく、その地域で「ものづくりができる人」を増やし、そこを拠点としてつながり、そこで生まれたプロダクトはすべて世界へ発信していくという理念を持った工房で、その理念を「Fab Charter(ファブラボ憲章)」とし、今は世界89ヵ国600ヵ所以上、日本国内でも16ヶ所に広がっているそうです。

「ものづくり」

・・・というと、私はせいぜいクッションカバーを縫ったり、小さな棚を作って自分でペンキを塗ったりするまでしか経験がないし、大抵のものは自分で作るよりもはるかに見栄えの良いものが安価で手に入る世の中です。

なので今いきなり、これからは自分で手軽にいろいろ作ることができるんですよ!と言われ、3D プリンタですよ、レーザーカッターですよと最先端の機器を出されても、たぶんなにを作っていいかのイメージさえ沸かない。

欲しいものを、必要と思ってるものを、自分で工夫して作ってみるという発想自体が、自分の中でかなり死滅してることに気がつく。そういえば小~中学生の頃は夏休みの工作でいろいろつくったっけ。専門学校の時は「動くおもちゃ」をつくるという課題があったっけ。

子どものころはなにかよく作っていたけど、社会に出てからはほとんど経験がないという人は多いと思う。ものづくりのイメージができる人が少ないのは、ものづくりのできる「場」が学校を卒業すると身近に存在しなくなることも大きい。

しかし今は技術革新で、機械工作につかう機材もコンパクトになり、比較的安価で私たちの身近に置けるようになった。

なのに「つくる」人がいない。近代の工業化、分業・効率化の時代の中で、私たちは「つくる人」であることをやめ「消費する人」になってしまった。

そういえば昔は、家具も衣服も大体はみんな手作りだったんだよね。民族衣装である着物が今は習わないと着られなくなってしまったように、ものづくりから暮らしが離れた今、道具はあってもそのイメージをつくることから習わないとわからなくなってしまった。

もう少し自分の暮らしの中に「自分でつくってみる」を増やしてもいいんじゃないか?・・・ファブラボはその「場」と「習うこと」を提供してくれてるのだ。

クリエイティブとコラボレーション

渡辺ゆうかさん

代表の渡辺ゆうかさん

渡辺さんは、市民が参加できるものづくりの場が地域にあることのメリットは、そこで世代を超えた交流が生まれることと、そのつながりがシニアや主婦など「昼間地域にいる人」のつながりであることだと仰った。それは点ではなく線のつながり。

実は地域とは「昼間そこにいる人」で支えられている。東日本大震災を経験してから、困難なことがあった時に支えになるのは「地域の絆」とよく言われてきたけれど、そういう「地域の力」は「昼間いる人」が作っているのだ。そしてその「地域の力になれる人」が、「クリエイティブな発想ができて、他社とのコラボ力がある人」であることは重要だと。

ファブラボは、そういう人材と「つながり」を育てる場でもあると。

こまよせー間伐材をレーザーカッターで切り抜き組み合わせ漆を貼ったアクセサリー

COMAYOSE~こまよせ

上の作品は、森林保護活動から生じる間伐材を使ったアクセサリー。レーザーカッターを使って木材を切り組み合わせ、漆のシートでさまざまなデザインに。レーザーカッターという最新技術と古くからの寄木細工の技術とのコラボ。

 

今の小学生の6割以上は、将来「今存在しない」仕事につく

もうひとつ、渡辺さんから伺ったお話のなかで印象的だったこと。

「米国で2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう」

↑これは米デューク大学のCathy Davidsonの研究で出された数値で、発表された時にけっこう話題になりました。GoogleのCEOのラリー・ペイジ氏も「創造性を必要としない仕事は全てテクノロジーに代行される」と、同じような発言をしています。

たしかに、私が新卒でグラフィックデザイナーになったばかりの頃(1990年頃だ!)、まだ世界に「webデザイナー」という仕事は存在しなかった。そして当時デザイン業界で必須の役割を担っていた写植オペレータはもういない。

このスピードはどんどん早まっていく。そんな未来を行きていくための新しい仕事をつくる力、仕事につなげていく力は、すでにある知識や知見ではなく、未知への「クリエイティブ」な発想から生まれると。

誰かが困っている、何かがうまくいっていない、そういうことを見つけて、そこを新たな技術や仕組みで解決していく。

「これって課題じゃないか?」と気づく力、そしてそれに対し「こうすれば良いじゃん?」と仮説をつくり、仮説を現実で検証していき、また仮説をつくる、という「試行錯誤する力」
これらは時代の移り変わりに関係なく、いやむしろグローバル化による既存枠組みの変動によって、より必要とされてくるだろう。

駒崎弘樹さんブログ「今の小学生のうち65%は、今存在しない仕事につく」時代の子育てに求められるものより引用

この「新しい仕事」については、2013年にNPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんが書かれた記事と、ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト・内山悟志さんのダイヤモンド・オンラインの記事がわかりやすく参考になります。


地域に「ものをつくる」という場があることで、その地域に住む人たちとの交流や意見交換が生まれ、わからないところはお互いに教え合い何かをつくり上げるという文化が生まれる。


そしてそこで生まれたものは、全世界に発信されシェアされることで国際的な交流も生まれる。


地域に「ものづくり」ができる人がいることは、その地域の力になる。

ファブラボはそのために存在していると。たしかにクリエイティブな発想とコラボ力は、なにかを創造する過程の中で育っていく大きな才能のひとつだと思う。できれば子どものうちから、そしておとなになってからも、仕事場以外にそういう場とのつながりを持てることは素晴らしいことだ。

ファブラボがただのDIY工房ではなくそういう役割を担っている場だということが、これらのお話からよく理解できました。

 

ファブラボ鎌倉で生まれたプロダクト。KULUSKA(クルスカ)のスリッパ

ファブラボ鎌倉で生まれたプロダクト。KULUSKA(クルスカ)のスリッパ

鎌倉から生まれたスリッパのプロダクト。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき全世界のファブラボでシェアされます。各国、各地域の風土や文化から生まれる素材やデザインで、今日もオリジナルなスリッパが作られています。

創造することと消費すること

「今ない仕事をつくる」21世紀の新しいスキルを生み出す場~ファブラボ鎌倉を訪ねて

築128年の酒蔵にある最先端な機器

以前何かの記事で、学生に「将来どんな仕事がしたい?」と聞くと多くは「なにかをつくる仕事がしたい」と答える、というのを読んだ記憶がある。どのくらいの年齢が対象だったかを忘れてしまったのだけど、多分高校生くらいだったと思う。

「なにかをつくる仕事」というのは、昔も今も憧れであり人気なのだ。

でもその職業につかなかった場合、「自分でなにかをつくる」はいつのまにか普段の生活から遠ざかってしまう。時間がないとなかなか出来ないことだから。

職業につけた場合でも、それは「仕事」であり、「自分でなにかをつくる」とは微妙に異なってくる。

でも今、たとえばこういうブログも昔に比べて誰もが開設しやすくなった。それと同じように電子工作機器なども身近な場所に置かれるようになった。

しかしブログを作っても大切なのはなにを書いていくかだし、工作機器も大切なのはそれでどんなアイデアを出してなにをつくるかだ。それはクリエイティブの領域だ。

ものづくりは遠くなったのではなく、逆に近くなっている。足りないのは時間なんだ。

じっくりと考える時間、試行錯誤しながら手を動かす時間、夢中になる時間。

それらを奪うのは長時間労働や長い通勤時間、そして飽くなき消費への誘い。

私たちがつくるささやかなものづくりの何千倍の規模で大量生産されたものが、今日はこれを買え、明日はこれを買えと襲い掛かってくる。その波状攻撃を受けながら、私は本当に欲しいものを見極めて、私の時間を守らなくてはならない。

その時間を守らないと、私の中のクリエイティブ力はどんどん消費に取り込まれ死滅してしまう。

はちみつ屋さん

レトロなはちみつ屋さん

取材後、インフォ・ラウンジのみなさんと、ファブラボの隣りにあるレトロかわいいはちみつ屋さんに寄ってみた。はちみつがアカシア、ブルーベリー、オレンジ、などミツバチが活動した植物別にいろいろ置いてあり、試食もできて味の違いを楽しめる。皆で好みのものをそれぞれお買い上げ。

(インフォ・ラウンジさんには今回の取材の機会をいただき感謝でいっぱい。ありがとうございました!)

鎌倉は観光地でもあるから、こういう普通の街にはなかなかない小さなこだわりショップもクオリティを持ちながら元気に営業してる。チェーン店は少なく、ひとつひとつのお店が個性的でじっくり見ながら街を歩くのは楽しい。

クリエイティブと街との関連性って大きいな、と、もしかしたらあたりまえのことにあらためて気がつく。街の個性がクリエイティブな人を生み出す土壌になる。でも、それは自然発生的な「たまたま」ではなく、そこにはいろんな形で「作ろう」「育てよう」「守ろう」としてる人たちがいるんだ。

その後ひとりでまたしばらく歩きながら、自分にとってこれから、人のつくったものを消費するだけの毎日に、「作ろう」「育てよう」「守ろう」という行動を組み込むことの大切さを考えていた。

小さなことでも身近なところから。なにかをはじめたい。

 

参考リンク

あとがき

家で仕事が多く普段引きこもりな私の生活の中では、あまり縁がないジャンルの人の話を伺う機会というのはとても貴重で、とてもいいお話だったためブログにも感想を書きたいと思いました。 クリエイティブとコラボ力、web制作にも必須のスキルだと思います。そして何かをつくるってやはり楽しいんですよね。仕事以外にも「なにかをつくる」をもっと自分の中に取り込みたいです。

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