へこたれない女。<風と共に去りぬ> | Rucca*Lusikka

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ここにきてやや夏ばて?らしく、だるいので2日ほどボケーっとしてました(いつもといわれればそうですが)

じゃあ何か本でも読もうかな、と、ひさびさ長編モノを再読。映画で有名な『風と共に去りぬ』を一気読みしてしまいました。初めて読んだのが18歳の時で、その後何回か読み返したことはあったのですが、じっくり読んだのはほんとうに久しぶりかも。

昔の小説なので、字は小さいしけっこうぎっしり・・・なかなかボリューム&読み応えがあります。

もう70年近く昔に書かれた小説で、その後映画になって、なのに未だに忘れられてない、というのがまずすごいなーって思うんだけど、やっぱり読んでみて面白かったです。

これもやはりスカーレットというヒロインの魅力なのかもしれませんが、正直、この女すごく嫌な女です。

女の友達を持てないタイプの女で、自分の美しさを良く知っていて、自分が常に男に一番モテていないと気がすまない。とにかく自己中でわがまま、常に物事の表面しか見えず、他人の気持ちがわからない、と、欠点を挙げていくともうきりがないくらい・・・。

その反面、愚直なまでに義理堅い。初恋のアシュレイと約束したから、と、憎いはずの彼の妻のメラニーを、戦時中、命がけで守る。敗戦で荒廃した故郷のタラ農園で立ち尽くすまだ二十歳の彼女の細い肩に、ボケてしまった父、病気の2人の妹、産後で衰弱しきったメラニー、忠実だけど自分の頭で考えることができない4人の黒人召使、小さな子供たちが3人、すべてが重くのしかかる。

彼女が『NHK朝の連続ドラマ』のヒロインにはなれないのは、この苦境をかなり『汚い手を使って』乗り越えた、というところなのかな。でも彼女は後悔しない。済んだことは仕方がない、あの時はああするほかに方法がなかったんだ、と言い聞かせ、忘れてしまう。

あらためて読んで思ったのは、この小説の時代背景・・・南北戦争当時の南部アメリカの社会というものについて。

男は紳士であること、女は淑女であることが強く求められる時代でした。男は全知全能で、広大な土地や財産を所有し、婦人には敬意を払い篤く保護するが、女にも頭脳があることは知らない。

結婚前の女は、小鳥ほどしかものを食べず、ただ可愛く愛らしく、男にうなずき、守られるように振る舞い、しかし結婚すれば大農園の主婦として、農園を管理し、社交を不足なく取り仕切り、使用人の監督をし、しかもそれが全て男の甲斐性になるように振舞わなければいけない。

婦人に敬意を示すのが紳士であること、なので、昔の日本の男尊女卑よりはましな気もするけど、あくまでも女は『男あっての女』、であり、結婚してない女は尊敬されないし、身分の低い男と結婚した女は軽蔑の対象になったし、夫よりも有能な女、有能である事をかくさない女(スカーレットがそうだったけど)は非難の的になってました。

アメリカというのはリベラルな国という印象なんだけど、時々、たとえば有名人の不倫問題とかでものすごいバッシングがあったりとか、その辺今でも、自由なのかお堅いのかわからない時があるなぁ。少なくとも100年以上前のアメリカ南部はバリバリ保守的だったのね。

戦争後、彼女は男並みの責任を背負い、男のように才能を発揮し、事業を起こし、利用できるものは(美貌も武器とし)何でも利用し、必要なら敵と手を取り合うようなこともして金を作ることに成功した。そして自分の故郷のタラを、家族を、貧困から守った。

でもそのおかげで、立派な夫に恥をかかせた女として、敵にへつらう裏切り者の女として、彼女の属する古い社会から白い目で見られてしまうようになってしまった。でも彼女はお金さえあれば手に入らないものはないと固く信じていたので、そんな事は気にせず自分のやりたいように振舞った。

メラニーだけが彼女の戦いを理解し、彼女を白い目から守ってくれていたけど、彼女はアシュレイの妻であるメラニーを憎んでいたので、少しもその愛をありがたいと思っていなかった。

彼女の欲しいものは安心して暮らせるだけの充分なお金、そして初恋の人アシュレイ、この二つが彼女の望みの全てだった。アシュレイはメラニーと結婚してしまったが、彼女は彼が本当は自分を愛していると疑わない。

彼女の最初の結婚は、アシュレイがメラニーと結婚してしまった腹いせに、メラニーの兄を誘惑したのだったが、夫は結婚後2週間で出征し2ヵ月後に病死してしまった。

二度目の結婚は、故郷のタラを競売にかけられるのを防ぐ為に、小金を作っていた妹の婚約者を騙し、誘惑し、自分と結婚させタラの税金を払わせる為だった。彼女はその後金儲けに夢中になり、夫をないがしろにして働き、夫をいじめ、紳士の夫の面目を潰し、その後夫は、彼女が原因の事件に巻き込まれ命を落としてしまった。

三度目の結婚相手こそ、彼女の運命の相手レット・バトラーで、彼女の魂を理解した唯一の男だったけど、彼女はアシュレイへの幻想が捨てられない。彼女は人の心の奥が読めないのでレットの愛情に気がつかないし、自分が本当はレットを愛している事も気がつかない。

そして最後になって初めて、彼女は自分がアシュレイではなくレットを愛していたと気がつくんだけど、その時すでにもうレットは疲れ果て、彼女に対する愛を失い去っていってしまった。そして影でずっと自分を世間の噂から守り、支えてくれたメラニーの愛も、メラニーの死とともに気づき、そして失ってしまう。

彼女に残されたのは豪奢な家とお金だけ・・・愛する夫も、ただひとりの友も、彼女が属する社会の古い懐かしい友人もみんな失ったことに気がつく。

ひとりの美貌の女の人生の破綻の物語・・・にならないのはやっぱり最後のこのセリフ、

たとえ敗北に直面しようとも敗北を認めない祖先の血を受けた彼女は、昂然と顔を上げた。

かならずレットをとりもどすことができるだろう。かならずできるはずだ。

ひとたび心をきめたからには、手に入れることができない男なんて、これまでだって、ひとりもいなかったではないか。

「みんな、明日、タラで考えることにしよう。そうすれば、なんとか耐えられるだろう。明日、レットをとりもどす方法を考えよう。明日はまた明日の陽が照るのだ」

 

ビビアン・リーが泣きながら「Tomorrow!」と顔を上げる映画のラストシーンが思い出されます。

意地悪な見方をすると、ああやっと、この女ここに来て自分がいかに周りを傷つけてきたかを思い知って、やっと反省するだろう、不幸になって当たり前だ、ザマアミロって思ったとたん、

 

うわ!この女へこたれねぇ!!!

 

と面食らう瞬間でもあり、彼女の欠点でもある「超・楽天主義」が最大の美点として輝いて、おもわずあっけにとられながらも、気がつくとその強烈な光に両手を合わせてしまうワタシ・・・てな感じになってしまう、そんなラストだと思います。

 

何十年経ってもこの長い小説、映画が、古びれず廃れずにいつまでも輝いてる理由はコレにつきる、なんだろうなぁ・・・。

今回私も再読して、最後の最後の、このへこたれなさにあらためて脱帽、でした。その自尊心、その強烈なポジティブシンキング・・・すごいわ。

物語はここで終わるんだけど、10年ほど前、違う作者で続編が出ました。題名は『スカーレット』日本語訳は森瑤子。

全てに破綻したスカーレットが、その後いかにして立ち上がっていくかを書かれています。これも何年か前に読んだのですが、またもう一度読み直してみようかと思います。

※どうやら今はもう絶版らしいです。でも古書では出てるみたい。興味のある方は図書館か古本屋さん、Amazonマーケットプレイスで探してみてください♪全4巻でした。

 

紹介リンク

続編・森瑤子訳「スカーレット」の感想と考察記事も書きました。こちらもどうぞ(ネタバレ注意です)

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