益田ミリさんの新著「すーちゃんの恋」を読みました。
すーちゃんシリーズは大好きで、1作目の「すーちゃん」からずっと読んでいます。
1作目ではカフェで働く34歳のすーちゃんでしたが、いますーちゃんは37歳です。前巻の「どうしても嫌いな人」ですーちゃんはカフェを辞めて、今は保育園での給食の調理師になっています。
子供を産む人生と産まない人生。柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ主演映画化決定!!
前作(どうしても嫌いな人)でカフェを辞めたすーちゃんが転職した先は保育園。調理師として働き始めて5カ月が過ぎようとしている。ベテランに囲まれて、子供たちと過ごす尊い時間。
いつの間にか37歳になって、あと3年で40歳になるけれど、子供の頃に想像していたのとちょっと違う。いや、かーなーり違う。37歳といえば、結婚して子供を産んで、「お母さん」として生きていると思っていたのに、結婚どころか、彼氏もいないし。
そんなすーちゃんにある日訪れる「久々のときめき」。カフェで働いていたときに少し気になっていたお客さん「土田さん」(書店員)と偶然再会したのである。「なんかあったらメールください」と言われて、「やった?」と喜ぶすーちゃん。さて、土田さんにメールするのでしょうか。
カフェ勤務の時よりも更に輪をかけた女の職場で「出会い」のない日々・・・でしたが、今回はちょっと恋の予感が・・・!相手はなんと前のカフェで働いてた時、よくランチに来てた隣の本屋さんの店員さんです。
そうです、「オレの宇宙はまだまだ遠い」の書店員、土田くんなのです!
あれ、たしか、「オレの~」の中で土田くんは最後のほうでやよいちゃんという彼女ができてたはず・・・でもカフェ時代、すーちゃんも土田くんもお互いにいい印象をずっと持っていたみたいで、そこへ偶然の再会。果たしてどうなるのか?
といった新たな楽しみももちろんあるのですが、保育園で働き始めたすーちゃんの、いろんな子どもに接する日常エピソードと、37歳で独身で、もしかしたらもう一生結婚しないかもしれない、子どもも産まないのかもしれない、という自分の人生について、いつものひょうたん型のテーブルに向かってひとりつぶやく姿、などなど相変わらず共感どころがいっぱいです。
そして、結婚してママになった友だちのまいちゃん、41歳になっておなじく彼氏がいないさわ子さん、2人とのいままでとやはり変わってしまった、そして変わらない交流のエピソード。
これらがまた折り重なっていって、淡々としながらじわじわくる、いつものミリさんワールドが十分に楽しめます。
ママになったまいちゃんと食事に行ったんだけど、まいちゃんのまだ小さい赤ちゃんがぐずってしまってなかなかゆっくり話ができない。申し訳なさそうなまいちゃんに、
そんなことはないよ!と顔には絶対出さないけど、別れたあとに、やっぱりちょっと、やっぱりちょっと、つまらない・・・と思ってしまうすーちゃん。
そしてまいちゃんも、
子どもは愛しいです
子どものいない友達に自慢したい気持ちがないとは言いません
でも、
イライラもするんです・・・時間が、だって、自分の時間がない
な?んて言おうものなら、決まってこんな視線を感じるんです「それくらいガマンしなくちゃ、お母さんなんだから!」
(略)
あたしはお母さんだけれど、
お母さんになったのだけれど、
「お母さん」じゃないあたしだっている
「すーちゃんの恋」より引用
と、すーちゃんと別れたあとふと寂しくなるのです。 このひとりごとみたいな思いをすーちゃんの前で言えば、きっとすーちゃんはだまって聴いてくれる、でも分かり合えないだろう。それもわかってる。
離れたってこれからもまいちゃんはすっとあたしの親友
なんて思わないまいちゃんは親友なんかじゃなく友達
親友という言葉で
友達をしばってはいけないんだただ流れのままにつきあってゆくのがいい
それでいいと思うこういうのを
「あたしらしさっていうのかもね?」
「すーちゃん」より引用
これは前にまいちゃんが結婚した時のすーちゃんのモノローグ。
もう今までみたいに、会社帰りにご飯食べながら仕事の愚痴や将来への不安を一緒に共有しあえることもないんだなぁと。「女の友情」というものにやけに達観してるすーちゃん。
まえにこのエピソードの感想を書いたことがあったけど、すーちゃんのこういうところ、なんか私もすごくわかるんだよなぁ。私も同じようにずっとずっと「女の職場」で働いてきたからかな?自分は今は結婚してるけど子どもはいないし、晩婚だったのでひとりであてのない未来という気持ちもすっごくわかる。「先に行った」友だちはみんな眩しく見えるんだよね。
その時の記事はこちら→?【読書】すーちゃん 女の友情について思うこと
すーちゃんとまいちゃん、またいつか、またいつか、いろんな話ができる日が来るのかな・・・?
「歳をとったと言っても24歳のブスより34歳の美人のほうが女のランキングは上なんだから」と、自らを奮い立たせたあと悲しくなってたキャリアウーマンのまいちゃんはもういなくて、ママとなり、自分を自然に「おばさん」といえるお母さんになっている。
流れのままに、まいちゃんとすーちゃんが、また楽しい夜のおしゃべりをできる日は、来るのかもしれないし来ないのかもしれない。・・・そしてそれはすーちゃんよりもうちょっと年上だけど、私にもまだわからない。
でも子どもが大きくなればまた大人だけで会える時間も増える。その時彼女がその時間を楽しく思ってくれるか、そうでなくなってるか・・・それはまちまちだけどね。
お子さんとも一緒に今でも会う友だちもいれば、すっかりもう年賀状だけの付き合いになってしまった友だちもいます。
すーちゃんは保育園という職場で、日々「いつだって自分全開」な子どもたちと接して暮らしています。
給食大好きな子、好き嫌いの多い子、全然食べてくれない子、小さなその子なりの理由やこだわりが、最初は甘やかされて育ったわがままに見えてたけど、だんだんとそれらが輝いて見えるようになったといいます。
ミリさんのマンガは決して説教臭くそういうのを押し出すことはないので、私が感想としてこう書くのは、未読の人にはなんだか余計なことなのかもしれないけど、すーちゃんは、37歳独身彼氏なし、というある意味世の中的には「マイノリティー」な生き方だって、ひとりひとりの子どもたちの「自分全開」な個性のひとつと同じだってことに・・・思うようになったんじゃないかな?
園長先生の奥さん(70歳くらい?)と一緒に野菜を採りながらの話のやりとりで、奥さんに「あなたの働きかた好きよ」といわれたすーちゃんが、
「でもわたし 前の職場では半分逃げ出したようなもんですから」(←前作「どうしても嫌いな人」で、すーちゃんはどうしても嫌いな人が原因で職場を辞めてたのでした)
と答えるんだけど、奥さんは、
そんなの今はいいのよ
それでよかったって思う生き方をすれば
なんともないのよ
それにね、そんな言い方しなくていいの
「逃げ出した」なんて
言葉にしばられず
そのまま受け止めればいいの
「逃げた」じゃなくて「辞めた」
それだけのことよ
?「すーちゃんの恋」より引用
って言ってくれるんですよね。
自分らしく生きてきたらマイノリティになってしまった。ネガティブな理由で前の職場を逃げ出すように辞めてしまった。
そんな言葉にしばられず、逃げたではなく辞めたでいいと。それでよかったって思う生き方をすればなんともないと。
ああいいな、そしてなんだかわたしもグッと背中を押してもらった気持ち。
あ、「すーちゃんの恋」の感想ブログなのに、すーちゃんの恋についての話が一向に書けないままここまで進んでしまいました(汗
ていうか、すーちゃんの「恋」の行方については結局まだまだこれからだろう・・・ということで、きっとこの先続きの話が出てきてくれるんじゃないかなと大いに期待を持って見守って行きたいところです。
すーちゃんシリーズ、今度映画が公開されるんですよね。
『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』
2013年3月2日(土)全国ロードショー
公式サイト:http://sumasa-movie.com/(C) 2012 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』製作委員会
なんだかマンガのイメージよりぐっと美女揃いではありますが、このポスター見るとわりと自然な感じ(さすが女優さん!)ですね。
すーちゃん(柴咲コウ)、まいちゃん(真木よう子)、さわ子さん(寺島しのぶ)は、かつてのバイト仲間。それから十数年、今でも友情は続いている。
料理好きでカフェ勤務歴十数年のすーちゃんの、最近の関心事はもっぱら職場の中田マネージャー(井浦新)。OA機器メーカー勤務のまいちゃんは、現在不毛な恋愛中。そして、WEBデザイナーとして働くさわ子さんは、母と二人で祖母の介護の日々。
仕事、年齢、貯金、結婚、妊娠、介護……それぞれの道を歩いてきた彼女たちの悩みはつきない。ふと、立ち止まり、よぎる不安―《あたしが選んできたことは、ぜんぶ間違っていたの?》それでも彼女たちは”ちょこっと”の幸せを見つけて、今を生きていく──。
柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ初共演『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』がTIFF上映決定!ポスタービジュアル&主題歌も解禁 シネマトリビューンより記事引用
ひとつ不安は↑の記事。もし3人の関係を「なんでも話し合える昔からの大親友3人組」にしちゃうと、それはガクッとすーちゃんの世界とは離れてしまう。キモといっていいくらいだと思うのだけど、映画的にはどうかな?うーん。
でもそう言いながらもとても楽しみにしてるのでありました。映画見たら友だちとわいわい感想を言い合いたいです♪