無償ですがあなたの名前載せます系の仕事について思うこと | Rucca*Lusikka

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横浜のwebデザイナー&ライターRucca(ルッカ)のサイトです。ノート術で人生を楽しくおもしろくすることをテーマにブログを書いてます。

3月になりましたね!今年の冬は寒い日が多かったので暖かくなるのが待ち遠しいです。

今年に入ってから仕事が立て込んできてなかなかブログ更新ができなくなっていました。去年の今ごろの心細さを思い出すと、それはとてもうれしいことです。

デザイナーとしては実績も少なく、さらに10年以上の長期ブランクがあり、さらに業界平均年齢より高齢(涙)の自分が、細々ではありますがフリーランスで仕事ができるようになったのは、「今の時代」であることがとても大きいです。

どこの業界でも価格破壊が起きて、アマチュアとプロの境目が曖昧になってきたという「今の時代」です。

最近とても気になった出来事がありました。

まず大阪市天王寺区が、「無償で」働いてくれる広報デザイナーを募集したのがコトのきっかけです。

 デザインの力で、行政を変える!!天王寺区広報デザイナーを募集します

これに異議あり!として、デザイナーの増永明子さんという方が反対署名を集めました。そして1日で4,000名もの署名が集まり、呼びかけ人の方々が区長と直接ディスカッションし、区は募集を取り下げるに至りました。

「名前を入れるから、デザイン料は無償にせよ」という姿勢は
どこからくるものでしょうか。
デザイナーも納税している一市民です。
その市民をあまりに上から目線でバカにしていませんか?

そもそも、「デザインの力で行政を変える!」としながら
そのデザインに金を払わずして
どうデザインが育っていくのでしょうか。
価格破壊どころか、業界破壊にもつながりかねません。
このような陳腐な企画は、断固として許すわけにはいかず
大きな声として届けたいため
たくさんの署名をお願いいたします。

「天王寺区広報デザイナー」無償の募集について: デザイン料の無償を撤回 より引用

区が募集を取り下げたということで、先日、一連の出来事がニュースサイトに載りました。

区が無報酬デザイナー募集…抗議殺到、計画中止

大阪市天王寺区は1日、区のポスターなどを民間デザイナーに手掛けてもらおうと、「任期1年、無報酬」の条件で募集したところ、プロのデザイナーらから「業界をバカにしている」などと批判が相次ぎ計画を取りやめた、と発表した。

従来、区制作のポスターやチラシは職員がデザイン。昨年8月に就任した元NHK記者の水谷翔太区長が、「民間の力を生かしてよりよいものを」と発案した。
ところが、2月4日に募集を始めたところ、電話やメールで抗議が殺到。6日にはアマチュア限定に変更したが、「業界への配慮を欠くことに変わりない」「正当な対価を払うべきだ」などの意見が続いた。

結局、28日の締め切りまでに4人が応募したが、区は「これだけ批判を浴びると理解が得られにくい」と計画を断念。4人には事情を説明するメールを送った。

水谷区長は読売新聞の取材に、「業界に対する認識が足りなかった」と話している。

(2013年3月2日12時13分??読売新聞)

そしてこのニュースを見た家入一真さんがこのようなツイートをされました。その後いろいろこの件に対してのツイートが起こりました。

私は、最初の増永さんのツイートが流れてきた時に事の次第を知り、力になれればと思い署名をしました。

それは、「無償だけど名前入れます系」の仕事には、個人的にちょっと苦い思い出があるからです。

無償だけど代わりに名前を入れます・・・で現実起こったこと。

グラフィックの仕事は経験があっても、webの仕事はまだあまり実績がなかったフリーになりたての頃に、あるサイトのリニューアルメンバーを募集というツイートを見ました。

それは個人の方のつくる、「○○を盛り上げよう!」というサイトで、だいたいこんな内容で募集をかけていました。

「個人のサイトなので報酬は出せないけど、製作者としてお名前をお載せいたします。あなたのこれからのお仕事へのはずみになれば幸いです。他にもブロガーさんなど有志の方をライターとして募集しています。みんなで○○を盛り上げて行きましょう!」

とにかく実績を作りたかった私はこれに応募しました。○○には縁があるし、それになんだか面白そうだし、新しいことを始める「仲間」を得られると思ったのでした。

ところが、製作に入りなんどかやり取りをしていくうちに・・・だんだん違和感が高まっていったのです。

自宅でひとり制作作業をしながら「こうして下さい」「ああして下さい」というメール指示を受けていくうち、自分は「仲間」でもなんでもなく「(文字通り)タダの下請けではないか?」と。

私からの提案の余地はなく一方的な指示のみ。「一緒につくり上げるんだ」という実感がまるで起きないのです。

その後いろんな誤解なども重なり、結局途中で降りてしまったのでした。

相手側にも迷惑をかけてしまったし、最後までやれなかった自分にかなり落ち込み、自信を取り戻すのに時間がかかりました。

今の私だったらたぶん、「ちょっと待った!」と忠告できると思います。でも当時はまだわからなかった。いろいろ知らなさ過ぎたし、やはり焦っていました。

それなりにスキルのある有志が無償で集まって、ワイワイと楽しく企画しみんなでつくり盛りあげる!

なーんてどこかにある世界の「楽しそうなこと」を勝手に幻想していたけど現実は違ったのです。

それでも「プチクリ」は増えていく

でもおそらく、これからもデザインに対する価格破壊は進んでいくだろうし、「無償でやってくれる人募集!」もどんどん増えていくんだろうと思います。そして今回の公募にも4名の応募があったように、「無償でもやりたい」と応募する人も増えていくと思うのです。

そして価格破壊はプロとアマチュアの合間にいる人間にとって買い叩かれるピンチでもあり、仕事をつかむチャンスでもあると思います。そしてだからこそその狭間にいるデザイナーは、気をつけなくてはいけないこともいっぱいあります。

それが今回のような「無報酬だけど名前載せます系」の仕事だと思います。

安く使われてあたりまえだからこそ、経験が少ないからこそ、情弱であってはならない。そして想像力を持たなくてはならない。

今回応募した4名の人がどういう人だったかはわかりませんが、多分かつての私のような「実績を作りたい」「縁を作りたい」という思いの人が応募したのではないでしょうか。

もちろん当事者同士がOKならば他人がとやかくいう事じゃないかもしれません。

ただデザインの仕事というのはひとつ出来上がるまでに、何度も起きる修正との長??い付き合いになることが多いのです。場合によっては「とってもセンス悪いもの」を作らなくてはならなくなる可能性だってあります。自分の「作品」を思うままにつくるわけではないのです。

完成まで心折れずに続けていかなくてはならない時、無償でそれを楽しみながら出来ますか?

指示を出してくる相手をずっと信用し続けていけると思えますか?

たぶん、経験が少ないうちはそのへんの想像力が一番足りないんだと思うのです。そこを肌感と嗅覚で感知して避けられるがプロだと思います。

Day 075

「プチクリ」たちを狙った「名前載せます系」の仕事は、「一緒につくりあげる仲間募集」に見せかけてこれからも増え続けていくに違いありません。そして中にはそこでうまくチャンスを掴む人もいるでしょう。

でも「無償で」はやはり気をつけて。

私はかつてそれを降りた時、しばらくの間落ち込んでしまいなかなか浮上できず、頼んだ方も間際になってデザイナーにドタキャンされるという大変な思いをしました。

結局「タダ」は双方にとって高く付く可能性があるってことです。

マイナス面ばかりじゃないとは思うけど、こういう事例もあったということで、受けてからどんなふうに仕事が進んでいくのかを考える想像力を持って欲しいです。そしてよくよく相手を見て下さい。

もし、無報酬だけど名前載せます系の仕事が、とてもやってみたい!と思わせるような内容だったら、いっそ「お金払うので自分にやらせて下さい!」と言ってやってみるのはどうだろうか?

仕事を渡す方も受ける方も、無償での関係よりは、ずっとやりやすく納得がいく内容のものが出来上がるかも・・・「実績」や「作品」にしたいのであれば尚更。

今回の事例は、デザインの正当な報酬に対する世の中の理解、というテーマの話にもなったのですが、その辺は私はまだ充分に語れないので、他のデザイナーさんの意見を読むに留めました。

それと「専業」についても考えされられました。プロというのは本来「専業」で成り立つ人のことだった。それはきっと今後揺らいでいくだろうと。いろんなことができなくてはならなくなる。仕事の柱は何本でもあったほうがいい。

それこそ「食いぶち」を守るために。

参考図書

 

 

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