夏の庭 The Friends | Rucca*Lusikka

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横浜のwebデザイナー&ライターRucca(ルッカ)のサイトです。ノート術で人生を楽しくおもしろくすることをテーマにブログを書いてます。

さて、そんなわけで最近は読書な毎日が続いています。あ、たまにDS開いてますがなにか?

何かおススメの本があったら教えて〜と、あちこちで教えていただき本屋さんで買ってきて、ただ今端から読破中です。(ありがとうございます)読み終わったら随時感想をアップして行こうと思います。今回はこちら読了しました♪

湯本 香樹実
新潮社
発売日:1994-03

 

さて、どんな話かまったく知らず、家に帰って裏表紙に書いてあるあらすじを読んだら、

「や、やばい、おじいちゃんと少年モノだ・・・」

と、まず思ってしまいました。

実は苦手なんですよこのジャンル・・・というのは、私はおばあちゃん子おじいちゃん子でありまして、同じように祖父母と一緒に暮らしたことがある人はお分かりかと思いますが、子供っていうのは残酷なんですよ。母の帰りが遅いからと、おじいちゃんが作ってくれたお味噌汁をまずいと言って食べなかったり、おばあちゃんが一緒に行ってあげるから、というのに「おばあちゃんとじゃイヤ」って言ったり・・・。

Sakana

私は宮崎駿のアニメで「魔女の宅急便」が一番好きなのですが、話の中に主人公のキキが、依頼主のおばあちゃんと一生懸命「おさかなのパイ(写真)」を焼いて、豪雨の中おばあちゃんの孫娘の誕生日のパーティーに届けるシーンがあるんですよ。

でも孫娘は「おばあちゃんから?・・・あたしこのパイ嫌いなのよね」とか言って全然喜んでなくて、キキは落ち込んじゃうんですよね。

もうね、この場面が痛くて痛くて・・・(つД`)・・・だからこそこの映画がとても好きなのかもしれないんですけど・・・キキが元気を取り戻していく姿がまた泣けるんですよね、何回見ても♪

話がそれましたが、そんな事を思い出しつつ「夏の庭」、この話は小学校6年生の少年3人と、近所に住む一人暮らしのおじいさんとのひと夏のかかわりのお話です。

仲良し3人組の、デブの山下、メガネの川辺、ノッポの木山。

夏休みに入る前、デブの山下が自分の祖母のお葬式に行ったことから物語は始まります。初めて出たお葬式、初めて見る死んだ人の体・・・棺に花を入れる、釘で棺を打つ音、火葬場の煙、骨壷に入れる白い骨・・・山下は祖母にはほとんど会った事がなかったので悲しくはない、ただそれから、ぬいぐるみとプロレスをしてたらそれがおばあさんの死体だった、というような怖い夢を見るようになったという。

「死んだら、どうなるんだろう?」

「頭では人間はいつか死ぬってわかってるつもりでも、全然信じられないんだよな」

その話を聞いてから、川辺も木山も同じような悪夢を見るようになってしまう。そこでメガネの川辺が言う、モヤモヤをはっきりさせる為に、近所に死にそうなひとり暮らしのおじいさんがいる、

その人を見張って死ぬ所を発見しよう!!

そして3人はおじいさんの見張り&尾行(ストーカーですな)を開始します。

おじいさんはほとんど家でテレビをつけている。3日に1度くらい外出して弁当や缶詰を買う、夏なのにコタツに入ってる、家の周りはゴミだらけで悪臭がする、家は古くてあちこち壊れている、庭はゴミと雑草でいっぱい。

3人は探偵気分で辛抱強く、おじいさんがいつ死ぬかとストーキングを繰り返してるんだけど、ある日おじいさんに見つかってしまう。

「何してるんだ、おまえら!」

びっくりしてまごまごしているとおじいさんは言う

「まったく、親の顔が見たいもんだ」

母子家庭で親のことを言われるとキレてしまうメガネの川辺が、カッとなってつい叫んでしまいます。

「ちっくしょう!じじい、よく聞け!俺たちはお前を見張ってたんだよ!
おまえが死にそうだって言うから、見張ってたんだ!
おまえがどんな死に方するか、オレは絶対見てやるからな!」

おじいさんにストーキングがばれてしまって、もうやめようかとも思ったけど、川辺は断固続けると主張、ばれたのでかえって堂々と見張るようになります(^_^;)

おじいさんは水をぶっ掛けたり、勝手にしろといったりしながらも・・・

・・・そのうち、おじいさんは自分で料理をするようになる、洗濯をするようになる、3人に命じて庭の草むしりをするようになる(この辺、このジジイなかなかやる)、ゴミを出すようになる。

3人は「俺たちはあいつと馴れ合ってはいけない!あくまで監視の一環だ!」と言いながらも、おじいさんと一緒に家のペンキ塗りをするようになる、スイカを一緒に食べるようになる、宿題をおじいさんの家でやるようになる。漢字を教わる。梨のむき方を教わる。花の名前を教わる。おじいさんから恐くて悲しい戦争の話を聞く。

3人はそれぞれ子供ながらに、自分ではどうにも出来ない漠然とした不安があります。デブの山下は父親と同じ魚屋になりたいんだけど、母は魚屋なんて、と、中学受験させたがっている。メガネの川辺は父親が新しい家庭を持って、そこに子供がいることを理不尽に思っている。ノッポの木山はお母さんがいつも家でお酒を飲んでいるのをイヤだと思っている。

ととと、なんだかあらすじが長くなってしまいました(^_^;)

ここまで読んで、おじいさんと3人が仲良くなっていくのがすごく嬉しい反面、子供たちがおじいさんの尾行に飽きたり、勉強で忙しくなっておじいさんに会えなくなったりでおじいさんがまた淋しい暮らしになっちゃったらどうしよう、それだけは勘弁!と、こわごわ読んでいくようになってしまいました・・・が、この小説はそんなことはなかったです。

それがとっても嬉しい!!(つД`)

ラストは書かないでおきますが、ラストも良かったです。3人はおじいさんとのいろんな思い出を持ってひとつ大人になったんだなぁって。

ぼくも「もしおじいさんだったら」ということをあいかわらずよく考える。すると、自分ひとりでくよくよ考えているよりずっと、すっきり答えが出てくるのだ。

それは「思い出の中に生きている」なんていうのとは、ちょっと違う。

もっとたしかな、手ごたえのある感じだ。

かなりネタバレなセリフになってますが、3人とも同じ手ごたえを持って成長したラストです。とっても良い小説でした。

映画にもなってるそうですね。おじいさんは三国連太郎さんだとか。こっちも機会があったらぜひ見てみたいと思いました♪