伽藍からバザールへ~レイヤー化する未来に生きて行くこと。 | Rucca*Lusikka

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日々の気づきをノートに綴っていく。その時間が自分の未来をよりおもしろいものに変えていく。そんな気づきの一滴をすくって描くRuccaのブログです。Lusikkaはフィンランド語で「スプーン」のことです。

「未来を見る目」はオカルトではない 冷静な「叡智」である。

これは当ブログでも何回か紹介している私の愛読マンガ「風雲児たち」にある言葉です。あまりメジャーに知られていませんが、この作品の中盤に最上徳内という人物が出てきます。江戸時代後期に日本最初の北方探検家として蝦夷地開拓に貢献した人です。

日本にはじめて西洋医術を伝えたシーボルト博士が、母国への帰国直前、晩年の最上徳内と何度か会見しています。

会見時に徳内は「発覚すれば死罪覚悟」の地図を、今はまだ早いが将来、日本の平和的な開国につなげられるよう役立ててくれとシーボルトに渡し、そしてその「時」は、「25年後とみている」と予言したそうです。

鎖国の日本にいながら驚くべきほどの国際感覚、行動と経験に裏付けされた幅広い見識と、国内外状況の分析力。シーボルトが「18世紀における最も卓越した日本の探検家」と賞賛したという、徳内の「未来を見る目」がこの「予言」を生んだのでしょう。それはオカルト的な「予言」とは全く違う。(「風雲児たち」17巻に掲載)

「未来予想」とは、正しい歴史認識と、幅広いたくさんの知見、膨大なデータ分析、現状の認識、そしてその人の持つ「確かな見識」から導かれたものこそ説得力を持つ。

未来とは、冷静な「叡智」から見えるもの。

徳内・シーボルトの会見は1826年。そしてペリーが日本に向けて黒船を出航させたのは・・・1852年!

歴史を知ることで未来を読む

佐々木俊尚さんの新刊レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まるを読みました。

 

レイヤー化する世界:佐々木俊尚著

すごく読み応えがありました。「この先の未来」がどのように展開されていくのかを、過去の歴史をさかのぼり順序立てて丹念に紐解かれています。・・・と書くと難しそうですが、非常にわかりやすく整理されていて、学生時代に世界史を選択してなかった人にも読みやすいと思います。

私はライトな歴女でありますが、歴史好きになる前まで私は、私が今生きてる「現代」を、いちばん「進化した新しい時代」と思い、戦争に明け暮れていた時代や、貧富の差が激しかった時代、庶民の人権なんてどこにもなかった時代、迷信に振り回されていた時代を、「野蛮」とか「未開」とかで考えがちでした。

戦争がなく、貧富の差が少なく、安全で安心した毎日がおくれて、なりたい職業につける自由がある時代。

私が生きている「現代」はそういう幸運な時代でした。(地球上すべての人が享受してるわけではありませんが)

でもその「現代」はどうやって成り立ったのか?それを中世からの大局的な歴史観から見ていくと、

「現代」とは「やっとたどり着いた完成形として永遠に続くであろう時代」ではない。

ということがとてもよく理解出来ます。そして今すでに、日本でも世界でも、さまざまなことが「前のようには行かなくなってきている」

「レイヤー化する世界」で佐々木さんは、世界がいままで、

  • 中世の帝国時代(ギリシャ、ローマ、イスラム、中国が中心の、さまざまな民族や文化が争いながらも共存していた時代)から、
  • ヨーロッパが中心の国民国家時代(「ソト」に植民地を持ち「ウチ」の結束力を高め経済成長し、民主主義で国民と国家を結ぶ時代)に、

と変遷してきた流れを、わかりやすく読み解いてくれています。

そして今、「現代=国民国家の繁栄の時代」は、IT革命によって現れた、

「超国籍企業」

にその富を奪われつつある時代に入ってきていると・・・。

そんな変化の中「新しい働き方」とか「これからの時代どうやって生きて行くか」とかいう人が増えてきている。いろんな書籍が毎月のように出ている。いろんな「論客」がネットでテレビで論争している。

何かが変わってきている。自分も変わらないといけないのか。どう変わればいいのか?変わった先には何があるんだろう??

超国籍企業が作る「場」と、つながる「レイヤー」

ここに出てくる「超国籍企業」とは、AppleやGoogle、Facebookやtwitter社などのことを言います。アメリカの企業ですが、アメリカで製品を作っているわけではなく、アメリカ人の雇用をたくさん生んでいるわけでもなく(ていうか多くの雇用を必要としない)、アメリカにたくさん税金を収めているわけでもない。

たくさんの「ウチの雇用」を生み、国家に税金を納めていた「ウチの大企業」は衰退を始めている。しかし代わりに台頭した超国籍企業は母国に富をもたらさない。

そのかわり超国籍企業がつくる?(テクノロジー)のサービスは、今や全世界に広がり、いろんな国で個人が、仲間同士が、小さい企業が、そのサービスを利用しビジネスチャンスにし始めている。

以前読んだ橘玲さんの本「大震災の後で人生について語るということ」の中に、

 

伽藍とバザール

という言葉があったのを思い出しました。

そこで、今までの「場」と、超国籍企業が作る新しい「場(テクノロジー)」がどう違うのか、「伽藍」と「バザール」を使ってイメージできるキーワードを並べてみました。

  • 伽藍=人の集団が物理的・心理的な空間に押し込められている場。「世間」「空気」「リセットは困難」「御恩と奉公」「品格」「美徳」
  • バザール=人の出入りが多く常に動いている場。「自由」「チャレンジ」「何度もリセット可」「人気」「競争と共生」「恩知らず」

※バザールの部分の「恩知らず」は、伽藍側からの価値観によるキーワードです。伽藍とバザールにおける最大の違いのひとつは「恩」の捉え方、受け渡し方、だと思うんですけど、これはまた別の話になるのでいずれ。

Cheap Stones

今までの、「ソト(植民地・発展途上国)」を持つことで「ウチ(自国)」を結束させ、繁栄させ、国の富を増やしてくれる「大企業」を中心とした政治、経済、雇用、教育、人々の家族形態を、ひっくるめて「伽藍」とたとえるなら、

超国籍企業がつくる「場」に「個人」が集まり、自由に商売したり、気の合う仲間とコミュニティを作ったりするのが「バザール」

そのバザールの「場」は無限に生まれては淘汰され、消え、また新たに生まれる。ひとりの人間が何種類ものバザールに同時に参加しても良い。出入りも自由。

その多数のバザールと自分をつなぐのが「レイヤー」。自分の中に持つ「レイヤー」の一枚一枚が異なるバザールにつながっていく。

「レイヤー化する世界」の最後の章では「未来」の姿が語られています。

それは私たちがひとつのパッケージに入れられているような過去から、私たちの中の様々な「レイヤー」が、それぞれの「場」で繋がっていく時代。伽藍からバザールへと移行していく未来。

では、その時代ははたして、人が「生きやすい時代」になっていくのでしょうか?

レイヤー化した世界で生きて行くこと

今年の1月の終わり頃、佐々木さんよりメッセージをいただきました。

去年の2月に、当時「ノマド」という言葉が急に流行りだした頃、私が書いたあるブログ記事を佐々木さんがキュレーションしてくださったことがありました。

私はその記事の中で、ある女性の働き方を紹介していました。

  • 私が以前店長として働いてたアパレルのお店で、人手が足りない時に百貨店の人の紹介で助っ人に来てくれた女性の働き方が、今思うと「ノマド的」だった。
  • 彼女は歳も50代でしかもフリーではシフトに入れないという事情があり、どんなに販売力があったとしても普通に求人にエントリーしてきたらマイナス要因に目が行き、まず採用されない人だった。
  • しかし彼女は、ピンポイントで、短期で、助っ人要員として、百貨店内の複数のお店で働くことによって「自分が中心」の働き方を可能にしていた。
  • 彼女は百貨店の社員でも、派遣登録社員でもない。全くの「個人」。人手がピンチの店にヘルプで入ってくれて、販売力もあり人柄も良くてどの店からも重宝がられていた。

この記事の女性の話を詳しく聴かせて頂けないかと。

私は佐々木さんの著書のファンで講演なども聴きに行ったことがあるのですが、直接お話しするのはもちろんはじめてです。当日は緊張しまくる私にやさしく気を使ってくださり、新しい本の話もわかりやすく説明してくださり、大変貴重で大変贅沢な時間を過ごさせて頂きました。ほんとうにありがとうございました。

あの時伺った内容の話がこのように一冊の本にまとまったのを読んで、なんというか、感動です。プロの仕事のものすごさ(ああ、我ながらなんという陳腐な表現力だ・・・)をビシバシ感じました。特にあとがきにある参考文献の多さ!!あの量がこんなに凝縮されて読みやすく展開されているなんて本当に凄いことだと思います。

そしてこの本はこれらの資料に裏付けされた佐々木さんの「冷静な叡智」からの未来図です。とても説得力があります。

Study, study, study

さてしかし、第1章ではなんと中世の時代から始まったこのストーリーが、デパートの販売員さんの話へとどう繋がっていくんだろう?

・・・と読み進めて行きましたが、最後の9章で「レイヤー化した時代には今までの弱者が強者へと転換していく」そんな人たちの一例として紹介されていました!(しかもあとがきに私の名前まで載せてくださり感激です)

家庭の事情でフリーでシフトに入れない、という、販売の世界では大きなマイナス要因を持つ50代の彼女は、履歴書送って面接して、会社に採用される、という「伽藍コース」からはとうの昔に去り、バザールに「場」を移して働いていたんですね。

これらはわずかな例に過ぎません。もっと優秀でコミュニケーション能力を駆使し、多くのレイヤーで多くの人びととつながることができてる人もたくさんいます。

しかしこれまで「弱者」だと思われていた人のなかにも、自分がだれかとつながれるレイヤーを見つけて、そこでうまく社会に接続できるようになることもあるということなのです。

佐々木俊尚著「レイヤー化する世界」より引用(P261)

 

私も今、会社という伽藍から離れてバザールで仕事をしています。バザールには月々決まった収入も、来月の仕事の約束もないけれど、バザールを複数持っていれば伽藍に入るための椅子取りゲームに参加しなくてもよく、自分の都合よりも伽藍の掟に合わせた働き方をしなくてもよくなりました。

まあ、私には入れる伽藍ももうなくて、欲しい世界は「伽藍」の中にはないというのがわかり、だからバザールに出て行くしかなかったんですけどね。

最初はどうしていいのか全然わからなかったけど、ブログをきっかけに仕事に繋がる出会いが増えていき、こうして会いたい人に会えるようになる出来事に恵まれ、「自由」の中で自分のレイヤーがいろんな「場」に繋がって行くのを感じます(私の場合とてもゆっくりですが)

しかしその「超国籍企業」が作り、レイヤーをつなげる「場」は、私たちに善意でそれを提供してくれているお人好しではありません。利用させる代わりに様々なデータを集めています。「場」の支配をめぐって競争を続ける「超国籍企業」たちの思惑のなかで、私たちはそれでもその「場」を利用し「場と共犯」しながら、しなやかに自分のバザールを見つけたり作ったりして生きていける。

本の最後ではこれから来る時代への「不安」だけではなく「希望」を感じることが出来ました。

この本は主に若い世代の人に読んでもらいたくて優しい文体で書かれたそうです。松尾たいこさんのイラストがところどころに入っていて、その章の内容を現していてこれもとても素敵です。

就活で悩む学生が読んでくれたら、将来に希望を持てる内容だと思いました。と同時に、私世代の「伽藍で働きづらくなった人」にも読んでほしいです。

子育て、病気、障がい、介護。

これらを優先せざるを得なくなると伽藍には居づらくなります。でも「伽藍育ち」にはバザールでの生き方がわからない。今は一度出た伽藍にまた戻るのは非常に困難です。伽藍への椅子取りゲームに参加しないですむ「バザール力」をつけるにはどうしたらいいんだろう?

それを見つける、気づくための1冊になります。キャリア設計で新たに「第二エンジン」を噴かしたいと考える人はぜひ読んでみてくださいね。

参考ブログ記事

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  • *うさぎもえこ*

    こんにちは。
    伽藍で生活しつつ、バザールで生きていくためには?と思い、仕事をしつつ、勉強とかもしてきました。今は環境が変わり、バザールで生きていく為の努力中です。伽藍(会社勤務)で生活していた時、伽藍でその話(勉強、読書とか)をすると、「何で?」という反応が多かった、ような気がします。【伽藍=会社】ばかりでなく、主婦の人にもそういう感じの人がいたような…。私自身も、ほぼ伽藍で生活してきた(いる)訳ですから、あまり他人様のことは言えないのですが…。

    • うさぎもえこさんこんにちは。コメントをありがとうございます。

      前に「月3万円ビジネス」という本の著者の藤村靖之さんの講演を聴きに行ったことがあるのですが、伽藍からバザールへ急に移動しても、泳げない人がいきなり海に飛び込むようなものだとおっしゃっていました。

      なぜなら、伽藍に生きてきた人には、仲間がいない(友だちと仲間は違う)、テーマがない(問題意識がない)、スキルがない、からだと。

      少しづつ、こっちとあっちに橋をかけながらゆっくり移行していくのが良いと。

      お互い少しづつ頑張って行きましょう^^

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