9月いっぱいまでで閉店してしまうと聞いて、先日、東京丸の内にある「松丸本舗」に行って参りました。
自分は読書とか、ノート術とかで「考えること」にとても興味があり、実践したり、いろいろ調べたり、学びの場に出かけて行き、教えを受けたりしているのですが、そこで出会った友人にこの書店のことを教えてもらったのです。
丸善が創業以来、140 年にわたり考えてきた「知とは何か」「人と本のかかわり」というテーマに、松岡正剛の30年におよぶ編集的方法と読書世界が出会い、ここにひとつの実験空間が誕生しました。
本には人類のあらゆる英知と行為が、また人々の欲望と消費のすべてが折りたたまれています。読書を一過性の体験から開放し、「読書をする社会」を拡張していくには、“ブックウェア” ともいうべき本をめぐる生態系のようなしくみから考える必要があります。
ブックウェアでは、本たちが読前・読中・読後でつながり、そこには「本を贈る文化」や「共読する文化」なども開花するでしょう。
松丸本舗では、「本の見せ方」「本の接し方」「本の読み方」をさまざまに変容させ、より大胆に独創的で挑戦的なブックウェアの実験をシーズンごとに 試みます。著者と読者と書店の関係に新たな風を吹き込むことをめざします。
さらには版元・編集者・翻訳者はむろん、デザイナー・アーティスト・印刷・製本からメディア・IT業界・広告業界まで、本に関わるすべての人と、新たな「読書文化」を育んでゆきたいと思っています。
松丸本舗 松丸本舗とはより引用
場所は東京駅・丸の内オアゾ内、丸善丸の内本店の4階にあります。
松丸本舗は「本豪」といわれる、松岡正剛さんの「知」が具現化したような壮大な書庫です。その棚の並びにも、本の並びにも全てに「編集」された「法則」がある。
本棚から受け取るメッセージだけでもすごいのですが、そこでは「セイゴオ流読書術」のワークショップも開催されていて、友人が出てとても面白かったと聞き、私も受けてみたいと思いました。
「連読」「多読」「脈読」「棚読」「型読」
うーん、なんだかよくわかんないけど何か惹かれるキーワード!と、まあじつはけっこう軽い気持ちで…で、ワークショップは松丸本舗だけではなく本部の編集工学研究所という場所でも行なわれていて、自分の日程的に丁度そちらの方が合ってたので、編集工学研究所での「本稽古」に申し込みました。
テキストとして、松岡正剛さんの著書「多読術 (ちくまプリマー新書)」が上げられていたので読んでから参加しました。
さて行ってみると、場所は赤坂の閑静な坂の上にあり、建物もモダンで、通された部屋には一面の本棚!
参加者は7名ほどで男女半々くらい。しかし皆さま普段の生活ではまずお会いする接点のない職業のインテリジェンス感漂う方々ばかりで・・・完全★アウェイ感というか、私こんな場所にいていいの?ついていけるの?と冷や汗が出そうになりました。
そんなヒヤヒヤで勉強は始まりましたが、始まったらとてもおもしろく、講師の大川さんの説明はとてもわかりやすく…多読術の本の内容も、一回さらっと読んだだけでは身につかない部分を、なぞって解説して頂いたおかげでより身に入らせることができました。
読書術的な(例えば速読とか)モノは今まで一度も触れたことがなくて「本なんて好きなふうに読めばいいじゃん」と思っていたのですが、小説なら話がおもしろければグイグイ集中していけるけど、お勉強的な本(ビジネス書とか)は気がつくとスマホ見てしまったり、一回読んでもすぐ忘れてしまったり、「身につく読書」にするのには私の場合、ノートをつけながら2回以上読んでブログに書く、くらいまでしないと身につかない・・・。
でも読みたい本はどんどん出てくる!
なので読書をもっと「身につく読書」にするには?という私の悩み?に、ばっちり効いた講座になりました。
「はじめに編集ありき」
編集工学、という言葉を私は今まで聞いたことがありませんでした。これはとても奥が深くて私には簡単には語れないんですけど、「読書」もまず「編集」として考えるのだと。たとえば。
- 本棚に置く本も3冊セットで編集する。ある本を手にとったら両隣の本についても考えてみる。
- 「読前(目次をよく読む)」「読中(本文を読む)」「読後(思い出す作業をする)」3つの視点で考える。
- 「本はノートとみなす」‥‥大胆に書き込もう!見開き2ページをピシっと開きキーワードをマーキング。
- 「同じ言葉を探す」「対を探す」「予測を立てる」←再読のスピードアップに
などなど、これはキーワードなのでこれだけ見てもわかりにくいと思いますが…。とにかく一番伝わったことは、本は、「本」と「自分」の関係だけで終わらせるのではなく、
- 「本」と「自分(経験・感情)」のつながりをたくさん見つける。
- 「本」と「自分」と「場(読んでいる場所・姿勢・着ている服)」をつなげる。
- 「本」と「前に読んだ本」のつながりを探す。「これから読む本」へのつながりを作る。
この「つながり」が編集するということであって、そこにおもしろさがある。ということです。
これがね、スマートノートでいう「脳内リンク」につながるなって思った。そして私が考える、理想とする「おもしろき人」というのは、この「脳内リンク」をたくさん持っていて「自由自在な人」のことなんです。
私なりに感じた編集の解釈
「本と自分」
まず読んだ本を自分につなぐスイッチ。これは単なる記憶力や暗記力ではなくて、それを「自分自身」とつなげなくてはならない。自分につなげられなくては、ただの受験のために覚えた歴史の年表になってしまう。本能寺の変が何年にあったかを知ってるだけでは「おもしろき人」にはなれない。
自分につなぐスイッチは、自分の今までの経験や、自分の感じた好き嫌いの感情につなげられる。どうつないだかが「編集」になる。つながったら忘れにくい。つながればそれを「自分の言葉」で話せるようになれる。
「本と場所」
読んでいる「その時」の場所、読んでいる姿勢、着ている服、におい、まわりの音、その時五感で感じているものとつなげるのも「忘れにくい=自分につながりやすい」。
あと、例えば歴史物を読むときは畳の部屋でびしっと座って背筋を伸ばして読む、とか「モード」を作って形から入るのもアリだそうです。マーキングには必ず2Bの鉛筆を使う、とか。今まで「場所」を考えて読んだことはなかったのでこれから試してみたいです。
そういえば旅先で買った&読んだ本ってやけに印象に残ってたりしますよね。
「本と本」
そして「本」と「本」のつながりを見つける。本の中の1章、2章のつながりだけでなく、過去に読んだ本や映画へのつながりを見つける。
私はけっこうこの作業が好きで、ブログでのいろんなレビューも必ず他の作品や違うキーワードを絡めていたりします。Aという作品ではヒロインの気持ちがさっぱりわからなかったけど、Bを読んだらやっとわかった!みたいなのを見つけると嬉しくなってしまう。
松丸本舗の棚の並びはこの法則に則っているそうです。両隣の本に「そこにある」意味を与える。本棚からも本が読める、それが「棚読」。
他にもたくさん受け取ったことはあるのですが、とりあえず今のところは以上で。これからの読書やノート、本棚づくりに生かしていきたいと思います。
そして「本棚」へ
さて、編集工学研究所でも素晴らしい本棚を拝見したのですが、講義終了後、9月いっぱいだからぜひ松丸本舗の本棚を見るようにと言われたので先日見に行きました。
本屋さんというより小説家や大学教授の私室の本棚みたいですよね。普通の書店だと、探しやすいように出版社別や作家名別になっているけれど、松丸本舗の本棚はテーマに合わせて両隣の本同士が手を組んでいるみたいに並んでいました。
先覚テロリストの挫折・・・と名付けられた棚。蛮社の獄、吉田松陰、水戸斉昭、高杉晋作。こうして置かれるとまとめて読んでみたくなります。
マンガもあります。左からベルサイユのばら、テルマエ・ロマエ、聖★おにいさん、(奥に)日出処の天子、三國志と並んでいます。むむむ、この法則とは!?
いろいろ推理するのもおもしろい!
9月で閉店なんてもったいなさ過ぎますよね…どこかまた別の場所で再オープンして欲しいです。興味のある方、一度観ておきたくなった方はぜひぜひお出掛けくださいね!!
参考リンク
- 松丸本舗サイト→松丸本舗
- 編集工学研究所サイト→編集工学研究所
- イシス編集学校サイト(本稽古の講座の案内もあり)→編集する。日本する。イシス編集学校
- 松岡正剛の千夜一夜サイト→松岡正剛の千夜千冊