「損をしたくない」という縛りから自由になってみよう。 | Rucca*Lusikka

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横浜のwebデザイナー&ライターRucca(ルッカ)のサイトです。ノート術で人生を楽しくおもしろくすることをテーマにブログを書いてます。

先日、ルミネの10%OFFで本をいくつか買った。横浜のルミネには有隣堂が入っているので、10%OFFの時に本をまとめ買いすることが多い。特にwebやデザイン系の本はなかなか(私には)高額なので地味にありがたい。ついでにちょっと気になる本がおいてあったりすると、1,600円くらいでも、「まいっか♪」と購入してしまうので危険でもあるが。

思うと、ここ10年でお金の使い方がずいぶん変わった。

アパレル業界で働いていた頃は洋服ばかり買っていた。自社のも他社のも。もちろん仕事で必要&20〜30代という女としてのお年ごろ的な理由が一番だった。特に有名ブランド好きというわけではなかったけど、あの頃はファストファッションというものがまだなくて、ふつーにおしゃれな服をデパートで買った場合あっという間に4,5万は飛んでしまっていた。

先日、急な雨で傘を買いました。雨空を見上げるとお花♪

先日、急な雨で傘を買いました。雨空を見上げるとお花♪でお気に入り

40手前でアパレル業界の仕事から完全離脱し、しばらく無職&勉強期間を経たことで、いったん「消費欲」というのをリセットできた気がする。断食すると味の好みが変わるといいますが、いったん収入がなくなったおかげで自分の消費バランスの悪さに気がついてきたというか。

「使えるお金の額が減った」のに消費行動というのはなかなかすぐには変われないもので、お金を掛けるべきところと、掛けるべきではないところの判断というのが正常にできない状態が続いていた。

再び働き始め、少しづつだけど収入が入り自分の好きに使えるお金ができるようになってきて、前とずいぶん変わったなと思うところがある。それは昔の働き方(社員・パート)と今の働き方(フリーランス)との大きな違いもかなりあるけれど。

そんなわけで今回は、そのへんの気づきをいくつか。

三角定規は誰が買うべきもの?

大昔(20年ほど前)の話ですが、私が新卒で入った横浜の小さな広告代理店にて、社長VSデザイナーの間でちょっとしたバトルがあった。

当時はまだ手作業で版下を作っていた時代で、ピンセット、カッター、三角定規、ロットリングペンというのがグラフィックデザイナーの必須道具だった。

ある日、会社の備品として皆で使っていた三角定規のエッジがかなり傷んでしまっていたので、チーフが新しいものを買ってくださいと会社に交渉した。しかし社長は、

「料理人が自分の包丁を、美容師が自分の鋏を持つように、デザイナーも自分の道具は自分で良い物を揃えるものだ」

といい、購入してくれなかった。

三角定規と言っても町の文房具屋さんで売っているようなものとは違って、版下で使うのはエッジに薄い金属が貼ってあるなかなか高額な(当時では)モノなのです。チーフは自分のためというよりは、まだまだ安月給の私ら後輩のために、

「それはおかしいでしょう?会社の仕事で使う消耗品なのだから。」

としつこく交渉してくれて、やっと会社で購入してくれた。私らは「わーい?チーフありがとうございます」と単純に喜んでいたのだけれど、そのゴタゴタの中、ある先輩はさっさと自分で自腹で三角定規を買っていた。

その先輩は数年後、会社を辞め20代で独立開業した。はじめから独立志向が高かった人で、ある大手から入った仕事のワンチャンスを逃さなかった。

当時その会社では打ち合わせなどは営業が行いデザイナーは制作に専念していたのだけど、彼女は自分で打合せに行くために自分の車で、ガソリン代も自腹で出勤し(クライアントの会社は車がないと行きにくい場所にあった)、カメラマンやライターなども自分で集めチームを作り、大手クライアントの信用を勝ち取り見事に独立していった。

迷いなく自腹が切れる心とは?

凡庸な私は「○○先輩はすごい!かっこいい!」と思いつつも、とても真似できない、私とは異次元の人だ、と、逆にデザイナーとは、クリエイターとはそこまでのド根性と才能とエネルギーがないと続けられないものだと思い知り、デザインの道を早々にリタイヤしたわけなんだけど、まさかその20年後の今、また舞い戻ってこの歳でもやってることには驚きだ。(これは時代が変わったことが大きいですが)

再びこの仕事を選び、思い出すのはこの時の先輩の行動です。

その大手クライアントの仕事を最初に受けていたのがチーフだったら、チーフも経験とセンスの良さの両方を持つ優れたデザイナーでしたが、営業をすっ飛ばして自分の仕事にすることはしなかったと思う。小さな広告代理店に振られるサイズの仕事でコツコツと信用を積み、優秀なものを作って行かれてたと思う。

しかし先輩は自分で大手のクライアント担当者を攻めていき、会社のサイズに不釣り合いなほどの大きな受注に成功し、そのレベルに見合ったチームを作るためあらゆるツテを駆使して人に会いに行き(ほとんど勤務時間外に)、そこからまたさらにステップを踏んで大きくなっていった。

交通費、打ち合わせ費、事務用消耗品費、通信費、どこまで自己負担していたかはわからないけど、三角定規を買う買わないの次元の人ではなかったのだ。

カフェでのノートタイムはやめられない。

カフェでのノートタイムはやめられない。

私はその後アパレル会社に入って販売の仕事をするようになった。会社では半期ごとにお店の服が制服として何着か貸与されるのだけど、もちろんそれだけではすぐに着たきりスズメになってしまう。1シーズン前の服までは着ても良いことになっていたけど、今お店で売ってない服を着ていると「それと同じものはないですか?」とお客さんに聞かれた時にいつも困ってしまう。

社販で買えるとはいえそんなに安い服ではない。しかし自分が着てる服は確実に売れる。それはちょっとした気持ちよさでもあったし、売れることで予算が達成できればお給料にも多少反映されるので、私はけっこう自腹で自社の服を買うようになってた。

しかしパート比率が高くなってくると、そこまで仕事に自腹切れる人ばかりではない。以前、派遣販売員が自腹で自社の服を購入させられるのは違法か、というニュース記事を見ていろいろ思い出し考えた。これは絶対に上司や会社からの強制があってはならない。しかし周りが皆自分で買うのがあたりまえモードになっていた場合、派遣社員なのにそれはさぞやプレッシャーではないかと思う。

自腹で買うから仕事熱心な子、無償で残業などもいとわないから出世する人・・・的な評価の仕方は嫌いだし、それこそブラックの温床だし、悪しきことだと思ってる。でもいま考察したいと思ってるのはそこではないのでご了承下さい。

この「迷いなく自腹切れる」という心の正体を知りたいと思ってるのです。

自腹は心を縛られずにすむ。

そんなわけで私は自社服を自腹で買うのは苦ではなかった。「着たものは売れる」という確信があったから。それは自分にとって「快」であり「得」であった。

しかし、クレーム処理で悩み本屋で「クレーム対処の仕方」的なビジネス本を買った時、正直「これ経費で落ちないかなー」と思ったことがある。なんで本来は会社が研修で教育しなくてはいけないことを、自腹で本買って勉強しなくちゃならないのよと。

そんな風に、アパレル時代私は自己啓発的なものには全くお金をかけず、現場で学べること以上のものには興味はなかった。洋服以外で、仕事に使うもので自腹で買ったのは、数冊のそれらの本と、会議用のノートなどの文房具、あと電卓くらい。ファッション誌もろくに買わなかった。

アパレル会社を辞めて、しばらく何をやったらいいのかまるでわからなくなり、収入もなくなり、何かやらなくてはと思った時に初めて「自発的な勉強」の必要性を感じた。そしてIllustratorやPhotoshopを学ぶためにビジネススクールに行ったり、職業訓練校に通ったりしたわけだけど、そこで初めて気がついたことがある。

「学ぶこと」に自発的に、自分のお金をかけている人はけっこう多い

ということ。知りませんでした。いや、気づきもしないでいたってことかも。そして自分がweb系の勉強を始めるにつれ、周りがどんどん変わってきた。webはどんどん進化していくから勉強しながらでないと追いつけないというのもある。あと、webを仕事にしている人はデザイン系より理系の人が多い。そして「頭いいな?この人」と感嘆する人が増えた。この人たちは本当に勉強熱心なのだ。

おそらく子供の頃から「勉強すること」が当たり前のことで自然なことなのだろう。息するように勉強してるのだ。彼らは仕事で使う分野の高額の書籍も迷いなく買うし、これいいよと人に言われたものに対する反応も早い。有料のセミナーにもどんどん出かける。

自腹切って学ぶことが損のように感じていた自分って一体何だったんだろう?

そしてアパレル時代あんなに買っていた自社の服は、自分のプライベートな服の趣味とは違うので退職後は着る気にならず、古着で売ったり友だちにあげたりしてほとんど今もう手元にない。買ったものなんてそれだけの価値なんだ。

もっと店舗マネジメントや、リーダーシップや、ビジュアルマーチャンダイジングや、ファッションコーディネイトなどの何かを積極的に「学んで」いたなら、現場経験(これも貴重な体験でしたが)+αとして今、自分自身に残っているものはもっと違っていたかもしれない。

今回買った本はこちら。

今回買った本はこちら。

アパレル業界では、自分の知見の中では店長まで行く人はやはり自腹で洋服を買う人だ。でもその上のスーパーバイザーや部長になる人は、やはり自分でそのための勉強を自発的にしていた人だった。

ただ、派遣社員ならどうだろう?これからますます増えていくであろう非正規社員。自腹で勉強するというモチベーションがその働き方で持てるだろうか?お店が売れようが自分の時給にすぐ反映されるわけではないのだ。できるだけ損をしたくないという気持ちのほうが強くなるのはしかたがないだろう。

しかし「損をしたくない」道ばかり選んでいると、自腹で勉強する人たちと縁する機会はどんどん失われていく。そして自分と彼らとの違いに気がつくきっかけすらなく、格差はどんどん開いていってしまう。

私は今フリーで働いているので、仕事で使うパソコンもライセンスも、書籍もセミナーや勉強会費も全部自腹だ。だけど、はじめは自分にはオーバースペックではないだろうかと思い、清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入したモノたちも、気がつけばちゃんと身の丈にあうようになっている。ここケチってたらいつまでも小さいサイズのままなのだ。

アウェイすぎると思ってた勉強会などにも、気後れしつつ参加しているうちにだんだん馴染んできている。

自分に投資した分に、けっこうちゃんと自分は返してくれている。この実感の積み重ねが、自分に迷いなく次の三角定規を買わせてくれている。

こういうお金の使い方ができるようになって、昔のほうが収入は多かったけど、昔よりちょっと豊かなんじゃないかな?と思ってる。まだまだ、自己投資になるとわかっていても大きな買い物には迷いがあったり、そのくせフラッと新しい服を買ってしまうことはあるけどね(笑)

「会社が買ってくれるもの」という前提を失う、または取り払うと、「自分で払うのは損」という感覚も一緒になくなるから、生きていくために、働いていくために、お金をかけるべきものは何なのかがクリアになるってことはあると思った。

今思うと、「デザイナーも自分の道具は自分で用意するものだ」と言ってた社長は深いところでは正しかったのかもしれない。当時はケチだと思っていたけど。ただ、自分で三角定規を買ってた人には痛い目に?遭わされていたけどね。むしろ、にこやかに何でも道具を与えてくれる場合のほうが警戒するべきなのかな?それって心を縛られるから。

さて、そんなわけで、ルミネの有隣堂で購入したこれら書籍に挑まないといけません。ツルツルになってる脳みそにシワを刻んでいく勉強というものはなかなかしんどいものではありますが、自分はきっとそれを返してくれると信じてガンバリマス。

今回購入した書籍

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