『あなたと読む恋の歌百首』 俵万智 文春文庫 ¥505
このブログ、読書日記ともいいながらほとんど読書日記がかけてないんですが(^^;、まあ、ちょこちょことは時間見つけて読んでいます。
この本は歌人の俵万智さんが恋の歌を集めて解説?されたもので、新聞の日曜版に掲載されていたみたいです。
『短歌』というと、万葉集とか百人一首とか、古典のような気がしますが、これは現代の歌人の方のばかりで、とても身近に共感できるのが多く、俵さんの解説もわかりやすくてイメージを広げさせてくれるので、楽しく読めました。
私が好きだな?と思ったものを何首か書いておきます♪
●きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えむとする
寺山修司
寺山修司さんといえば劇作家ですが、私は短歌からこの人を知りました。幸せな彼女が歌うでたらめな?ハナ歌ごとひっくるめて新しい幸せなんだよ?みたいな、なんかこう、参りました的幸せ感に、こっちも笑顔になるような歌です(*´∀`*)
●一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
山崎方代
こちらはというと、これ以上の質問を許さないような、南天の実の赤が映えるような、冬の青空のような笑顔がうかぶ歌です。
●新妻の笑顔に送られ出でくれば/中より鍵を掛ける音する
久松洋一
『いってらっしゃい?』のあとの『ガチャリ』・・・気になるといえば気になる、私はちょっと時間を置いてから静かに掛けるようにしてるのだけど、そんな心遣いを果たして気づいているのかな・・・?謎である。ていうか最近は玄関で『いってらっしゃい?』はほとんどなく、布団の中から(かろうじて)手を振っているのだけれど・・・だって寒いんだもんo(_ _*)o
●体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
穂村 弘
風邪を引いた?彼女が体温計をくわえて熱を測っている・・・と、突然『ゆひらー!』と意味不明の言葉を叫んでいる、一体何事かと思っていくと、窓の外に雪が降っている。。。『なんだよ!雪のことかよ!ちゃんとしゃべれよ!』『らって、らいおんけいくわえてるんらもん!』
そんな風景が浮かぶ、なんかこう、それだけの歌なんだけど、なんか好き(^^)
●君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとく降れ
北原白秋
まだ暗い朝に女を家に帰す、という歌。なにやら訳ありな感じ。。そです、白秋さんがこの時歌った恋人は人妻でした。家に帰さなくてはならない彼女の後姿を見送りながら、せめて雪よ、林檎の香りのように優しく彼女に降ってくれ、というせつなく優しい歌です。
白秋さんは夫に訴えられ、姦通罪で拘置所にまで入ります(そういう時代だった)。そんな苦労を経て、その後やっと結ばれた二人でしたが・・・(たしか)2年も続かず離婚・・・(つД`)嫁姑の問題とかが原因みたいですが、なんかこう、結婚に至るまでのドロドロとか、結婚したら今度は、夢から覚めたような現実の日常のバタバタとか、なんともかっこわるい一連の出来事になってますが・・・。
限りなく美しく優しく・・・歌だけはそのままに残るのですね。
●花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった
吉川宏志
告白のタイミングはぽろっと言ってしまうこともあれば、考えに考えて場面を作ったのに言えなかった・・・てのもありますよね。『いえた』というのはもしかしたら、『いえた』ことが奇跡に近いタイミングの瞬間だったのかもしれない。
●君に逢い得む唯それだけの希ひ抱き縁うすき人の葬送にゆく
辻下淑子
もしかしたら、あの人が来るかもしれない、と、不謹慎な気持ちで縁の薄い人のお葬式に行く・・・。そんなきっかけでもなければおそらくもう会えない人。人の不幸にかこつけてそんな願いを持つ自分。。。なんかなーと自分で思いながらも、髪形とかに気を使いまくっていくんだろうな。
●房総へ花摘みにゆきそののちにつきとばさるるやうに別れき
大口玲子
房総でお花摘みという、なんとも楽しいデートのあとに些細なケンカ?をしてしまい帰りの車の中は沈黙・・・バタンとドアを閉めて『サヨナラ!』と帰ってしまったら、それが本当にそれきり別れになってしまった・・・。前半の楽しさから急転直下・・・でもそんな別れってあるよね。それって最初からたぶん間違ってた二人がよくする別れ方なのかも。
●男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす
俵万智
これは俵さん本人自薦の歌。詳しくは知らないけど、確かご本人今未婚の母になっていたと思う。『チョコレート革命』は何年か前に出されたご本人の歌集で、私も読んだけど、なんともそんな予感をさせる歌がいっぱいでありました。でも響きがみんな潔くまっすぐな感じがするのは、『子供の自分』を見つめる本人がゆるぎなく『大人』であって、相手の人もきっとさらに『大人』なんだろうな。でも『大人』同士の恋というのはまったくつまらなくもあって・・・そこで『チョコレート革命』を起こしたらしい俵さんですが、本当の『子供』の出現によって、この革命がその後どうなったのかは・・・まだわからないのであります。(^^)